本当に弾きたい作品だけを選んで
超絶技巧のピアニストとして人気を集め、50代を迎えた今も精力的な活動を続けるケマル・ゲキチ。今回、耳に新しい意欲的なプログラムでリサイタルを行う。
前半は、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」、「前奏曲、アリアと終曲」。晩年の境地を示すような内向的な音楽に、円熟期を迎えたゲキチが向き合う。そして一転、後半には20世紀に作曲されたエキゾチックな作品が並ぶ。まずは、セルビアのタイチェヴィチと、ゲキチの故郷クロアチアの作曲家パパンドプロの作品で、血に流れる感性を発揮する。続けて中南米の音楽から、ヒナステラ、アレン、レクオーナを取り上げる。ゲキチは30代の頃、渡米中にユーゴ紛争が勃発したことでやむをえず拠点をアメリカに移し、現在もフロリダの大学で教鞭を執る。現地で出会った南米の学生や音楽家の影響で、こうした作品のすばらしさに気づいたという。
今彼が本当に弾きたい作品だけを選んだことが伝わる。まるで半生の経験を投影するかのような、魅力あふれるプログラムだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)
12/9(火)19:00 トッパンホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
http://www.proarte.co.jp
全国公演の日程は上記ウェブサイトでご確認ください。