飯森範親と日本センチュリー響による「ハイドンマラソン」ライブ録音の第21弾は、1770年代後半に書かれた3つの交響曲を収録。明るく落ち着いた華やかさが特徴のハイドン演奏だ。第69番「ラウドン将軍」は、折目正しいフレージングが洒脱さも導く。第71番も、はんなりとした味わい。第53番「帝国」も冒頭楽章序奏から、奇妙なほど悠然たる流れ。メヌエット楽章ではフェルマータを強調し、しゃちほこばった主題がにゅるっと溶解していく効果も。大真面目な顔をすることで、ユーモラスな仕掛けをさりげなく示すこの時代のハイドン作品。そのツボをよく押さえた演奏だ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年10月号より)
【information】
SACD『ハイドン:交響曲集 Vol.21/飯森範親&日本センチュリー響』
ハイドン:交響曲第69番「ラウドン将軍」、同71番、同53番「帝国」
飯森範親(指揮)
日本センチュリー交響楽団
収録:2021年9月&2022年5月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00824 ¥3850(税込)