モーツァルトのピアノソナタ全集の第5弾。使用楽器はベーゼンドルファーの新型280VC、それも久元祐子のために作られたというピラミッド・マホガニーの特別モデル。久元は粒立ちと木の温もりが共存する音を楽器から引き出し、モーツァルトがウィーンで活躍した時代の作品を奏でる。広く親しまれるKV545のソナタでは、音の輝きの変化、細やかなニュアンスの妙で引きつける。続く幻想曲やKV457のソナタという短調の作品で暗転する音、リスト編「アヴェ・ヴェルム・コルプス」の神秘的な音など、一つの楽器とは思えない多彩な音色を聴くことができる。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年8月号より)
【information】
CD『栄光のモーツァルト ピアノ・ソナタ KV457, 533/494,545/久元祐子』
モーツァルト:ロンド KV485,KV511、ピアノ・ソナタ KV533/494,KV545,KV457、幻想曲 KV475、アヴェ・ヴェルム・コルプス KV618(リスト編)/グリーグ:アリエッタ
久元祐子(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-9254 ¥3080(税込)