ロシアの新星、多彩なプログラムでコンクールの感動再び!
コロナ禍の影響で開催が一年延期となり、今年2月に行われた第5回高松国際ピアノコンクール。前回(2018年)から5年ぶりの開催となった今回、国内外の若いピアニストたちにとっては難儀な数年だったが、さすがフレッシュな感性。ピンチをチャンスにとばかりに、腕を磨く工夫を重ねてきた結果の良質な音楽が、ネット配信からも伝わる名演の数々だった。その中で優勝を果たしたのがロシアのフィリップ・リノフ。今年24歳のリノフは、現在モスクワ音楽院で名匠ヴィルサラーゼに師事。幼少期よりしっかり身につけてきた基礎力が、高松のステージでもJ.S.バッハやショパン、モーツァルトの細部に活きており、ブラームスの室内楽やラフマニノフのピアノ協奏曲では緩急自在のアンサンブル力をみせた。
この文句なしの覇者が、今秋Hakuju Hallに登場する。最初に弾かれるJ.S. バッハのカプリッチョ「最愛の兄の旅立ちにあたって」では、優美な装飾音符が散りばめられた響きに、ヨーロッパの教会が想起されるだろう。続くシューマン「ダヴィッド同盟舞曲集」の、独特な詩的世界をリノフがどう展開させるか興味津々。お国モノであるタネーエフ「前奏曲とフーガ 嬰ト短調 op.29」、プロコフィエフ「4つの練習曲 op.2」では、精緻な技巧による千変万化の表情や多彩な音色が楽しみだ。そしてバーバーのピアノ・ソナタは、若い感性ゆえの大胆かつ繊細な表現を、スケール感満載で聴かせてくれるだろう。「日本に帰ってくるのが楽しみ」と言うリノフ。待ってます!
文:上田弘子
(ぶらあぼ2023年7月号より)
2023.10/17(火)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp