日本を代表するアーティストたちによる唯一無二のアンサンブル
藤木大地とオールスター・アンサンブルが一体となるハイクオリティなパフォーマンスを聴けるのも、今のところこれが最後。聴き逃せない。
緻密にていねいに紡ぐ歌で心を打つカウンターテナー藤木大地。彼が卓抜なプロデュース能力を発揮しているのが、この「みなとみらいクインテット」だ。横浜みなとみらいホールの初代プロデューサー(2021-23)を務める藤木が、そのタスクのひとつとして掲げた「全国の劇場との連携」のために実現したプロジェクト。これまでに横浜市内の各ホールや、福岡、広島、新潟、奈良など全国5都市、7つの劇場で、8公演を行ってきた。
クインテットは固定ではなく、各パート数人ずつが控えるレギュラーの中から、公演ごとに異なるメンバーがユニットを組むシステム。これが毎回、とにかく豪華なのだ。今回も、ヴァイオリン・成田達輝、山根一仁、ヴィオラ・川本嘉子、チェロ・遠藤真理、ピアノ・田村響という、名前だけでもわくわくする顔ぶれ。ピアノ五重奏曲も交えつつ、バロックから日本の歌まで、藤木の歌をたっぷり聴かせる。メンバーが互いを語るトークコーナーなどもあって、肩肘張らずにほっこりできる音楽会だけれど、たとえば木下牧子〈鴎〉、平井夏美〈瑠璃色の地球〉(松田聖子)、村松崇継〈いのちの歌〉など、祈りや愛、やさしさがにじむ歌を、広島に世界の首脳が集まった年の8月6日に聴く意味も噛み締めたい。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2023年7月号より)
2023.8/6(日)14:00 よこすか芸術劇場
問:横須賀芸術劇場046-823-9999
https://www.yokosuka-arts.or.jp