名手の阿吽の呼吸が生み出す絢爛な2台ピアノの世界
クロアチア出身のピアニスト、ケマル・ゲキチは現在アメリカのフロリダに居を構え、フロリダ国際大学の教授、武蔵野音楽大学の客員教授として後進の指導にあたり、世界各地で演奏活動を展開している。彼は常に「演奏のなかに自分の言葉をもっている演奏家を目指したい」と語る。音のダイナミズムの広い、ドラマティックかつ情熱的で聴き手の心を高揚させるような個性的な演奏は、デビュー以来変わることがない大きな特長である。
一方、福井直昭は武蔵野音大学長の重責を担いながらピアニストとしても活動を行い、ゲキチとのデュオは高い評価を得ている。
「彼とは何度も共演を重ねていますが、最近は音の対話が濃密なものになってきました」
そのふたりがグリーグ(「ペール・ギュント」第1組曲)、ベートーヴェン(「運命」第1楽章ほか)の管弦楽作品の2台ピアノ編曲版からスタートするプログラムを組み、両者が得意とするリストへと歩みを進める。お互いの呼吸を呑み込み、より濃密になった音の対話は聴き手の心をわしづかみにするに違いない。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2023年6月号より)
2023.6/30(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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