名匠とハープ界の貴公子が奏でる耽美な調べ
読売日本交響楽団名誉客演指揮者の尾高忠明が、ラフマニノフの生誕150年を祝して、彼の交響曲第2番を読響とともに演奏する。尾高は、イギリス音楽のエキスパートとして知られているが、早くから最も熱心にラフマニノフの交響作品を取り上げてきた日本人指揮者の一人でもある。現在のようにラフマニノフの交響曲が評価される以前の1991年から92年にかけて、BBCウェールズ交響楽団とラフマニノフの交響曲全集を録音し、第2番については2010年にメルボルン交響楽団との録音も残している。つまり尾高にとって、ラフマニノフの交響曲第2番は、十八番のレパートリーといえるだろう。過度に甘くならず、激情にも走らず、中庸なバランスを保って、温かみのある演奏が繰り広げられるのが、尾高のラフマニノフ。ますます演奏の精度を上げている読響とどんな第2番を聴かせてくれるのか、楽しみだ。
コンサートの前半には、グザヴィエ・ドゥ・メストレを独奏者に迎えてグリエールのハープ協奏曲が演奏される。グリエールはキーウ生まれ。ロシア革命後、モスクワ音楽院教授を務め、「赤いけしの花」などのバレエ音楽で成功を収めるなど、大衆にもわかりやすい音楽でソビエト連邦を代表する作曲家になった。ハープ協奏曲も1938年に書かれたとは思えないほどロマンティックな音楽。現代最高のハープ奏者の一人であるメストレが非常に洗練された演奏を聴かせてくれるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年4月号より)
第256回 土曜マチネーシリーズ
2023.4/29(土・祝)
第256回 日曜マチネーシリーズ
4/30(日)
各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp