神尾真由子(ヴァイオリン)

ピアソラとニュー・アルバムで魅せる新境地

(C)Shion Isaka
(C)Shion Isaka
 現在ロシア在住の神尾真由子が、10月に全国5都市を巡る国内ツアーを行う。プログラムの中心となるのは、サラサーテ2曲とピアソラ「ブエノスアイレスの四季」というラテン系の作品だ。
「サラサーテはみなさんご存知の、超絶技巧を上品に味付けした音楽。ヴァイオリニストの技巧的な面を聴いていただくにも楽しい曲だと思います。ピアソラは初めて弾くのですが、タンゴの原曲に、ヴィヴァルディの『四季』のモティーフが邪魔をするように不協和音で入ってくる、とても刺激的で魅力ある編曲です」
 公演によっては、シューベルトやバッハなど、ヴァイオリンのスタンダードな性格のプログラムも用意されている。共演のフランツ・リスト室内管弦楽団とは5月にもブダペストで演奏した。
「とても気さくで仲が良くて、朝の9時からずっと練習するような勤勉な人たちです。雰囲気としては弦楽四重奏の人数が増えたような感じで、誰かが合図を出すわけでもないのに、解釈もテンポもぴったり合うんですね。あれは不思議でした」
 ツアー直前には2年ぶり5枚目のCDをリリース。アンコール・ピースを集めた、彼女初の小品集だ。
「実際にコンサートのアンコールで弾いている曲ばかりではありません。あまり知られていなくてアンコールではウケないような曲や、サイズが長くてコンサートに組み込みにくい曲も含めて、私の好きな曲が入っています。いろんなカラーの曲を入れているので、『こういう曲もあるのか』と探検する感じで聴いてください」
 実際、深く丁寧な歌が聴こえてくる、実に“大人な”アンコール・ピース集だ。共演ピアニストは昨年7月に結婚したミロスラフ・クルティシェフ。もし夫や恋人でなかったとしても共演したい魅力的な音楽家だという。
「良いところも悪いところも含めて、彼にしかない個性のあるピアニストなので、一緒に弾いてすごく面白いし、刺激になります」
 今回のアルバムの中の曲で二人の共通のお気に入りがあるかを尋ねてみた。
「ミロはなんて言ってたかな。レンスキーのアリア(エフゲニー・オネーギン)かな。あまり弾かれないですけれども、強く訴えかけるような曲です。逆に二人して苦労したのが『剣の舞』。ハイフェッツの編曲はピアノがすごく弾きにくいんですね。ヴァイオリンのほうは、私は乱暴に弾くのが苦手なので苦労しました。ハチャトゥリアンは少し汚いぐらいの音のほうがいいので」
 美しすぎても苦労はあるわけだ。初のピアソラに、初の小品集CD。神尾真由子がまた少し新しい顔を見せ始めた。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

神尾真由子 with フランツ・リスト室内管弦楽団
10/25(土)14:00 いたみホール
10/26(日)16:00 東北大学百周年記念会館川内萩ホール
10/29(水)18:30 岩手県民会館
10/31(金)19:00 サントリーホール
11/3(月・祝)14:00 千葉県文化会館
問:アスペン03-5467-0081 
http://www.aspen.jp

【CD】『愛のあいさつ&夢のあとに 神尾真由子 ヴァイオリン・アンコール』
ソニー・ミュージック
SICC-1714〜1715(CD+DVD限定盤) ¥3200+税
SICC-1716(通常盤) ¥2800+税
10/22(水)発売予定