弔いと祝祭が交錯する21世紀の響きを、世代を代表する二人が紡ぐ
2月の東京シティ・フィル定期で、作曲年代が約2世紀離れた2作品の“新しい響き”を楽しむ。前半はイギリスの作曲家ジェームズ・マクミラン(1959〜)のヴァイオリン協奏曲。2010年初演、前衛的ではなく聴きやすい作風だが、サウンドは凝っている。きらめくような多数の打楽器群にピアノが加わるオーケストラの音響(まさかの「声」まで!)はまさに現代的。母親の死の後に作られた作品で、「ダンス」と「ソング」を掲げた3つの楽章は新しくもどこか懐かしさがあり、ヴァイオリンの技巧性と歌謡性を引き出す。後半はベルリオーズ「幻想交響曲」。1830年、ベートーヴェン没後3年という時期に生まれた本作は、楽器編成も内容もそれまでの音楽から大きく飛躍した、斬新にして巨大な革命的傑作。21世紀作品の後に聴いても、約200年前の本作の衝撃とパワーはいささかも色あせないはず。
指揮は川瀬賢太郎。神奈川フィル常任指揮者を長く務め、本年4月からは名古屋フィル音楽監督に就任。30代ながら若手という枠を超えた活躍をみせる川瀬、東京シティ・フィル定期登場は2019年5月以来で、好調の楽団との再会が楽しみだ。協奏曲ソリストは郷古廉。若手を代表するヴァイオリニストであり、昨年からNHK交響楽団ゲスト・アシスタント・コンサートマスターに就任して目に触れる機会も多くなった。実は両者は20年3月に神奈川フィルでマクミランを演奏予定だったが、残念ながら中止に。彼らの思いもこもる同曲と川瀬得意の「幻想」、確実に熱い演奏会になる。
文:林昌英
(ぶらあぼ2023年2月号より)
第358回 定期演奏会
2023.2/17(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp