円熟期を迎えたピアニストが贈る一夜限りのステージ
ペーター・ヤブロンスキーが元気だ。本人いわく、新しい人生を歩んでいる。50代に入る手前から、著しい進境を遂げ、レパートリーにも独自の視点を打ち出してきた。難曲に意欲を向けることで、自身の精神や演奏技巧をさらに高めてきた感もある。持ち前のリズム感は冴えたまま、内面的な静けさを醸し出すようにもなってきた。
数年ぶりの来日リサイタルは、ヤブロンスキーの現在を鮮やかに明かす大胆なプログラム。ポーランドとスウェーデンにルーツをもつ彼はまずポーランドの近現代にあて、シマノフスキで幕開け、新録で目覚ましい成果を実らせたショパンのマズルカとバツェヴィチのソナタ第2番を連ねる。後半は若き日からの十八番たる「ラプソディー・イン・ブルー」の自編版で結ぶが、その前に自作のバラード第1番、スウェーデン次代のマルティン・スカフテがドビュッシーにインスパイアされて書いた前奏曲も披露。他の誰にもできないことを、彼にしかできないピアノ演奏で聴かせるだろう。
文:青澤隆明
(ぶらあぼ2023年1月号より)
2023.2/20(月)19:00 王子ホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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