ジュスタン・テイラー(チェンバロ)

古楽界の逸材が導くフランス・バロックの世界

(c)Julien Benhamou

 フランスの若きヴィルトゥオーゾ、ジュスタン・テイラーが2021年に続いて来日する。テイラーは、2015年、23歳でブルージュの国際古楽コンクール・チェンバロ部門で優勝、聴衆賞なども獲得して脚光を浴びた。

 筆者が初めてテイラーの演奏に触れたのは、それから2年後。フランスのナントで開催されたロワール国際古楽コンクールであった(ナントはラ・フォル・ジュルネで有名)。審査委員長はウィリアム・クリスティ。優勝は、テイラー率いる個性的な若手奏者たちのアンサンブル「ル・コンソート」(2015年結成)だった。

 テイラーは、ソロでもアンサンブルでも、自然で軽やか。それでいて実に独創的な解釈や構成を持ち込む。今回のリサイタルでは、18世紀フランスのクラヴサン音楽の巨匠F.クープランとラモーの作品が中心を占める。だがテイラーは、そこにヴィオル(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者として宮廷で活躍したフォルクレ父子を投入する。フォルクレの息子は、父のヴィオル曲を集めた曲集とともに、チェンバロ用に編曲した曲集を出版している。

 しかも今回のプログラムには、フォルクレというタイトルをもつ、様々な作曲家の作品や珍しい「ラモーの一族」による曲も含まれる。さらにはテイラー自身が編曲したフォルクレの舞曲も挿入されている。それは、まるで美術館にクープラン流の肖像画が並べられているかのようである。まさに謎解きのような趣で興味深い。
文:関根敏子
(ぶらあぼ2023年1月号より)

2023.1/10(火)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp

他公演 
1/8(日) 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール(0798-68-0255)