新常任指揮者・飯森範親とともに新たな時代を
2023年4月より群馬交響楽団は新たに飯森範親を常任指揮者に迎える。2023/24シーズンのラインナップには、「オファーを受けてその場ですぐに決断した」という飯森新常任指揮者のカラーがはっきりと打ち出されており、群響新時代の到来を予感させる。
シーズン全体を眺めると、メインプログラムにはロマン派や近現代の大編成の作品が目立つ一方、各公演に必ずモーツァルトが一曲含まれていることに気づく。これは「オーケストラをさらにブラッシュアップするうえで、もっとも効果的なのがモーツァルト」という新シェフの考えによるもの。これまでに山形交響楽団でモーツァルト、日本センチュリー交響楽団でハイドンに集中的に取り組んだ飯森の経験が反映されている。「古典を演奏することでオーケストラの音色感が格段によくなり、音程感覚にシビアになる。これはロマン派以降の作品にも生かせるすべてのオーケストラ作品の基本」と飯森は語る。
群響は1シーズンに10公演の定期演奏会を開催する。4月から7月までの前期に4公演、9月から11月の中期に3公演、1月から3月の後期に3公演が開かれる。
前期は華やかな作品がそろった。常任指揮者就任披露演奏会となる第587回定期演奏会では、モーツァルトの交響曲第1番、三浦文彰を独奏に招いたショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」が演奏される。硬軟織り交ぜた聴きごたえたっぷりのプログラムだ。
続く第588回は、名誉指揮者の高関健によるメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」(原田節のオンドマルトノ、児玉桃のピアノ)を中心としたプログラム。第589回は秋山和慶指揮によるベルリオーズ「幻想交響曲」、第590回と第53回東毛定期は角田鋼亮指揮によるマーラーの交響曲第4番(ソプラノは中江早希)と、色彩感豊かなオーケストレーションを楽しめる作品が並ぶ。
中期はバラエティに富んでいる。第591回では飯森がヴェルディのレクイエムをとりあげる。ソプラノの森谷真理をはじめとする第一級の歌手陣とともに、オペラ的な香りも漂うヴェルディならではの宗教音楽の傑作を味わえる。井上道義の十八番であるショスタコーヴィチの交響曲第4番(第592回/東京定期)、ポール・メイエ指揮のムソルグスキー=ラヴェル「展覧会の絵」(第593回)も話題を呼びそうだ。
後期はじっくりと耳を傾けたい味わい深い作品が並ぶ。桂冠指揮者の小林研一郎はブラームスの交響曲第4番(第594回)で作曲家晩年の深遠な世界に迫る。大井剛史によるドヴォルザークの交響曲第3番(第595回)も目をひく。めったに演奏されない作品だが、ドヴォルザークを敬愛する大井の思い入れが伝わる選曲だ。シーズンの掉尾を飾るのは飯森指揮によるブルックナーの交響曲第9番(第596回/東京定期)。コールス校訂版が使用される。
攻めの姿勢がうかがえる充実のラインナップは、地元高崎はもちろんのこと、首都圏からも熱い注目を集めそうだ。
(ぶらあぼ2023年1月号より)
2023/24シーズンの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.gunkyo.com