マーラーやブルックナーの交響曲を室内楽編成にアレンジしているエルヴィン・シュタインによる、ピアノ伴奏版に編曲された師匠筋シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」初の正規録音。切り詰められた編成で各楽器の音色を表現主義的に先鋭化させた原曲に勝るとも劣らぬ効果をピアノ1台から引き出していて本当に見事。工藤あかねの歌は正統的な歌唱から逸脱するような、いわばブレットルリーダー(キャバレーソング)的に濃厚な表現を聴かせ、これが成功、面白い! 対して廻由美子は鮮烈なタッチと音色変化の妙で工藤を迎え撃つ。併録が「蘇州夜曲」とはちょっと不思議だけれどこの対比がまた効いている。
文:藤原聡
(ぶらあぼ2022年12月号より)
【information】
SACD『シェーンベルク:月に憑かれたピエロ/工藤あかね&廻由美子』
シェーンベルク(エルヴィン・シュタイン編):月に憑かれたピエロ(ピアノ・リダクション版)/服部良一(廻由美子編):蘇州夜曲
工藤あかね(ソプラノ)
廻由美子(ピアノ)
妙音舎
MYCL-00033 ¥3520(税込)