新国立劇場の2009/10シーズンの内容が発表された。オペラハウスとしての基本となるレパートリー公演に加え、20世紀作品、さらに世界初演作品など、昨年度にもましてバラエティに富む内容となった。
★【新制作】ヴェルディ《オテロ》9月〜10月 6回公演 指揮には、新国立劇場《マクベス》《アイーダ》で名演を聴かせた若き鬼才リッカルド・フリッツァを迎える。演出を手がけるのはヨーロッパで注目のマリオ・マルトーネ。この強力なイタリア・チームが後期ヴェルディ畢生の大作といかに対峙するか注目される。タイトルロールはウィーン国立歌劇場《ニーベルングの指環》への出演も予定されているステファン・グールド。新オープニングにふさわしい上演となるはずだ。
★モーツァルト《魔笛》10月〜11月 4回公演 奇を衒ったところが無く、オーソドックスな演出で定評のある重鎮ミヒャエル・ハンペの演出。高い評価を得た98年の公演の再演。
★【新制作】ベルク《ヴォツェック》11月 4回公演 バイエルン州立歌劇場との共同制作。演出は、アンドレアス・クリーゲンブルク。演劇畑の出身だが、今後はオペラの領域での活躍が期待されている。指揮は就任当初よりこの作品の上演を熱望していたオペラ芸術監督の若杉弘。タイトルロールはトーマス・ヨハネス・マイヤー。ヴォータン、イアーゴ、カスパールなど古典ものからワーグナー、現代音楽までスケールの大きな活動を展開中。2008年2月にヴォツェック役でミラノ・スカラ座に登場、絶賛を博した。
★プッチーニ《トスカ》12月 5回公演 2003年9月の公演の再演。アントネッロ・マダウ=ディアツの演出は重厚な美しさが特徴。イアーノ・タマーのタイトルロール、カルロ・ヴェントレのカヴァラドッシ、ジョン・ルンドグレンのスカルピアと、ヨーロッパの主要歌劇場で活躍する実力派たちが顔をそろえる。
★ワーグナー《ジークフリート》2010年2月 5回公演 キース・ウォーナー演出の“トーキョー・リング”の後半2作を再演。指揮もダン・エッティンガーを再招聘。クリスティアン・フランツのタイトルロール、イレーネ・テオリン のブリュンヒルデなど。
★ワーグナー《神々の黄昏》2010年3月 5回公演 “トーキョー・リング”の最終章。こちらも指揮はダン・エッティンガー。《ジークフリート》同様にジークフリートはクリスティアン・フランツ、ブリュンヒルデもイレーネ・テオリンが扮する。
★【新制作】ドニゼッティ《愛の妙薬》2010年4月 5回公演 演出はチェーザレ・リエヴィ。最初は演劇の領域で成功するが、途中からオペラでも意欲的な活動を展開。欧米の主要歌劇場からオファーが来ているが、とくにチューリヒ歌劇場は1990年代より継続的に仕事をしている。2008年度演劇批評家賞と最優秀作品賞を受賞するなど、ヨーロッパでの注目度は高い。新国立劇場には初登場。今回の《愛の妙薬》も演劇的にも優れた舞台を観せてくれることだろう。指揮は新国立劇場4回目の登場となるベテラン、パオロ・オルミ。ネモリーノは1978年マルタ出身のヨゼフ・カレヤ。この3月にはメトロポリタン歌劇場でも同じ役での出演が決まっている。
★【新制作】R.シュトラウス《影のない女》2010年5月〜6月 5回公演 日本での本格的な上演は18年ぶりとなる。指揮はシュトラウス作品を自家薬籠中のものとする若杉弘。イタリアとドイツを中心に活躍しているフランス在住のドニ・クリエフの演出。美術、衣裳、照明も彼が務める。古典ものから現代オペラまでと、フィールドは幅広く、タン・ドゥンの《ザ・ファースト・エンペラー》のヨーロッパ初演も手がけた。R.シュトラウスでは《エジプトのヘレナ》のイタリア初演における演出も彼による。今回の《影のない女》は、皇帝はミヒャエル・バーバ、皇后はエミリー・マギー、乳母はジェーン・ヘンシェル、バラクはラルフ・ルーカス、バラクの妻はゲオルギーナ・ルカーチといった実力派をずらりとそろえたキャスティング。
★ビゼー《カルメン》2010年6月 5回公演 2年ぶりの再演。高評を博した鵜山仁の演出。指揮者のマウツィオ・バルバチーニは新国立劇場3回目の登場となる。タイトルロールはキルスティン・シャベス。ニューヨーク・シティオペラ、シドニー・オペラハウス、グラーツ歌劇場でこの役を歌っている。
★【新制作】池辺晋一郎《鹿鳴館》2010年6月 4回 新国立劇場創作委嘱作品。指揮者の若杉弘が原作(三島由紀夫)を選定しただけでなく、作曲家(池辺晋一郎)と演出家(鵜山仁)も選出した。1956年に初演された戯曲《鹿鳴館》は日本を代表する作品として知られ、華やかなストーリーと美しい日本語による台詞は、現在でも新鮮。そこから鵜山仁がどのような台本をつくり、池辺晋一郎が音楽をつけるのかが大いに注目される。ソリストは未定。