オーストリアのトーンキュンストラー管とドイツの名匠、準・メルクルによる新譜は、意外にもムソルグスキー・アルバム。輝かしい色彩でパワフルな演奏の多いラヴェル版「展覧会の絵」が、木目の見えるような肌合い、人間的な温かみが横溢しており、国籍を超えたフィナーレの大団円には感慨も加わる。近年原典版の演奏が多い「禿山の一夜」はあえてリムスキー=コルサコフ版で臨み、洗練された編曲から作曲者本来の粗野なパワーをも掴み出して、熱気とエネルギーに満ちた豪快な名演が実現。メルクルのこの版への思い、さらには作曲者への愛情が演奏から伝わり、なんとも嬉しくなる。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年5月号より)
【information】
CD『ムソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル版) 他/準・メルクル&トーンキュンストラー管』
ムソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル版)、歌劇《ホヴァーンシチナ》への前奏曲、禿山の一夜(以上リムスキー=コルサコフ版)
準・メルクル(指揮)
トーンキュンストラー管弦楽団
エイベックス・クラシックス
AVCL-84133 ¥2200(税込)