ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

名作の新しい姿に期待、巨匠との待望の公演が実現

ミハイル・プレトニョフ (c)上野隆文

 東京フィルハーモニー交響楽団の3月定期には、2015年から特別客演指揮者として活躍するロシアの巨匠ミハイル・プレトニョフが登場する。プログラムはボヘミアの民族主義的音楽を代表する作曲家スメタナの「わが祖国」全曲である。

 2003年に初めて東京フィルに指揮者として客演して以来、プレトニョフはその豊かな音楽的アイディアと卓抜な指揮ぶりで、数々の名演を残してきたが、そのプレトニョフが熱望していた作品が「わが祖国」であった。ピアニストとして活躍しながら、ロシアで初めてとなる民営オーケストラ「ロシア・ナショナル管弦楽団」を創設したプレトニョフ。そこには様々な困難があったと想像される。それを乗り越える時に、まさに「命を賭して」取り組んだ作品が「わが祖国」だったという。プレトニョフにとっては、彼自身の音楽人生において大きな意味を持つ作品であり、それを東京フィルと共演したいと願うのは当然のことだ。

 スメタナの「わが祖国」(全6曲)は第2曲「モルダウ」がよく知られているが、それ以外の5曲の背景にもそれぞれ深く長い物語があり、まさに作曲家の人生を賭けた作品でもあった。そこに深い共感を寄せる指揮者も多かったが、そうした過去の名演にとらわれることなくプレトニョフ独自の視点によって、この名作の新しい姿が描かれるはず。2020年、21年と2度にわたって延期されたこの「わが祖国」全曲コンサートを、今度こそ味わいたい。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年3月号より)

第966回 サントリー定期シリーズ
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