一貫して、柔らかくも凛とした信念のあるリリシズムを聴かせる。伊藤順一のデビュー盤『プロフォンド』だ。タイトル通り、深く心地よいショパンの「舟歌」に始まり、ノクターンやマズルカは安らぎを感じさせる速度に乗せて陰影を描く。2011年より8年間フランスで研鑽を積み、その風土をたっぷりと吸収した伊藤が、アルバム後半にはラヴェル、ドビュッシー、フォーレを選んだ。ラヴェルのメヌエットでは光差す音色を聴かせ、ドビュッシーのアラベスクでは安定の中にリズム語法の楽しさを伝える。フォーレの「夢のあとに」からは不思議と懐かしさが込み上げる。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2022年2月号より)
【information】
SACD『プロフォンド/伊藤順一』
ショパン:舟歌、ノクターン第17番、スケルツォ第4番、マズルカ第11番・第13番〜15番、バラード第2番/ラヴェル:「クープランの墓」第5曲 メヌエット/ドビュッシー:アラベスク第1番・第2番/フォーレ:ノクターン第4番、夢のあとに(アルトゥーロ・ルツァッティ編)
伊藤順一(ピアノ)
アールアンフィニ
MECO-1068 ¥3300(税込)