浜まゆみ(マリンバ)

恩師の作品のみで臨む特別なステージ

 マリンバの演奏を身近なところで聴く機会がようやく増えてきたように思う。でも、木琴とマリンバはどう違うの? と小学生に尋ねられたら、きちんと説明できる自信が実は私にはない。

 「小学校の音楽室に必ずマリンバが置いてあるという状況でもないので、まだまだ知られていない楽器かもしれませんね。でも、学校訪問などでマリンバを持って演奏に出かけると、みんな興味を持ってくれますし、分解して持ち運べることや、音色の繊細さに驚いてくれることが多いです」

 そう語るのはマリンバ奏者の浜まゆみ。約8年振りとなる彼女自身のリサイタルの全プログラムを、日本のマリンバ界の第一人者である安倍圭子の作品で組み上げた。

 「10歳の頃から、安倍先生に習っていて、そのまま先生が教えていらっしゃる桐朋学園で学び続けました。そもそも5歳の時にマリンバに出会ったのですが、さらに安倍先生の作品が演奏したくて続けていたという経緯があり、マリンバ一色の人生になりました」

 今回のリサイタルで演奏されるのは、「桜の幻影」「遥かな海」「祭りの太鼓」「風紋」などのマリンバ・ソロ曲に加え、マリンバ・コンチェルト「ザ・ウェーブ インプレッションズ 〜ソロマリンバとオーケストラのための」(ピアノ・リダクション版、ピアノ:新居由佳梨&大堀晴津子)などの大作もある。

 「マリンバのコンサートは、クラシック楽曲の編曲作品に、マリンバのための作品を加えるという形も多くて、ひとりの作曲家の作品だけを集めて演奏するということはあまりないと思います。私自身も安倍先生の作品だけでリサイタルを開催するのは初のことです」

 マリンバはたいていの場合、一つの手で2本のマレットを握り、鍵盤のように配置された木片を両手計4本以上のマレットでトレモロのように細かく叩きながら音楽を奏でる。

 「しかも、両手がふさがっていて楽譜をめくることができないので、新作といってもすべて暗譜で演奏します。そこがちょっとハードルの高いところかも(笑)」

 安倍作品はそのタイトルからも想像されるように、日本的な音の世界を大事にしながら作曲されたものが多い。

 「マリンバのための作品はほかの楽器に比べるとまだまだ数が少ないのですが、安倍先生の作品などを通して、その音の魅力、楽器としての可能性を感じていただけたら嬉しいです」

 これまでリリースしたCDも高く評価されている浜の演奏でマリンバの世界をもっと深く知ろう。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年2月号より)

浜まゆみ マリンバリサイタル
2022.2/12(土)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
https://www.proarte.jp