ドイツ音楽の系譜をさまざまな角度からひもとく
ソプラノの嘉目真木子は、決して器用なタイプではない。オペラの舞台における活躍は多くの人が知る通りだが、天才肌でサラッとこなしてしまうというよりむしろ地道な努力を続けていくタイプ。そんな嘉目が、このところ目覚ましい成果を上げているのが歌曲のジャンルだ。様々な国の様々な言語の歌曲における確かな声のコントロールが、彼女の弛まぬ鍛錬を示している。
そんな嘉目が、東京オペラシティの「B→C」シリーズに登場(共演ピアニストは髙田恵子)。ドイツ音楽の中から「哲学者や思想家と作曲家がどのように結びついていたのか」という視点から選んだ曲目は、実に多彩で知的だ。なかでもヴォルフガング・リームやヒンデミット、そして最後に置かれた、ライマンが2014年にゲーテの戯曲『ステラ』の中の詩句に作曲した〈私を破滅に導いた眼差し〉に目を惹かれる。その間にワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」が入るというチョイスも憎い。まさに「次のステージ」へ上りつつある嘉目の“今”を聴き逃すわけにはいかない。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2021年11月号より)
2021.11/6(土)14:00 大分/しいきアルゲリッチハウス
問:アルゲリッチ芸術振興財団0977-27-2299
https://www.argerich-mf.jp
11/9(火)19:00 東京/東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp