カニサレス(フラメンコギター)

フラメンコは音楽そのものが“言語”なのです

©AMANCIO GUILLEN
©AMANCIO GUILLEN

 フラメンコ・ギタリストのカニサレスが、9月に自身のカルテットを率いて来日ツアーを行う。彼は、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンなどへの出演で日本の聴衆にもお馴染みだが、フラメンコの範疇をはるかに超えたマルチな活躍でも注目を集めている。数々の異なるジャンルのアーティストとの共演で彼は何を得てきたのだろうか。
「ジャズや、ロックの一流アーティストとの共演は、とても大きな経験になっています。彼らのテクニックや演奏、音楽に対するフィロソフィーに触れることで、私の視野を広げることが出来ましたし、逆にフラメンコという音楽を客観的に見直せるとてもいい機会になりました。フラメンコの音楽の独自性は、音楽そのものが“言語”であるということです。演奏と同時に“作曲”が進行する音楽は、私の知る限り他にありません。リズムパターンを基礎に、演奏者同士が会話を交わすように音楽が創られていく。それがフラメンコの魅力であり、他のジャンルとは大きく違うところでもあります。リズム感が大切なのは、言うまでもありません」
 ジャンルをまたいだ活動と同様に、カニサレスが使用するギターもクラシックとフラメンコのハイブリッドだ。
「私が使っているハイブリッド・ギターは、スピード感を求められるフラメンコの奏法と、クラシックの求める美しい音の両方を再現することが可能です。このギターは、2011年5月にラトル指揮ベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートで『アランフェス協奏曲』を演奏するために、18世紀から続くギター製作者の6代目、ビセンテ・カリージョと共に9ヵ月かけて製作しました。クラシックの演奏に適した美しい音質を持ち、同時にフラメンコの奏法に見事に反応する、まさに夢のようなギターが完成したのです」
 今回の来日公演は2部構成となっており、第1部でファリャの楽曲を、第2部でカニサレス自身のフラメンコの音楽を披露する。
「ファリャは、フラメンコ色の強い作品を多数書いているので、私にとって特別な作曲家です。彼は、1922年に詩人ガルシア・ロルカとともにグラナダでカンテ・ホンドのコンクールを開催したことでも知られています。それだけフラメンコに造詣の深い音楽家だったのでしょう。聴きどころは、私が新しくカルテット用にアレンジしたファリャの楽曲です。CDではギターのみで演奏していますが、ステージでは私と、フアン・カルロス・ゴメスのギターに加えて、チャロ・エスピーノのカスタネット、アンヘル・ムニョスのカホン、それに2人のパルマとバイレが加わることにより、ファリャの音楽に潜むフラメンコ的な魅力を最大限に引き出します」
構成・文:編集部(取材協力:プランクトン/質問作成:林田直樹)
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)

カニサレス・フラメンコ・カルテット
9/19(土)兵庫県立芸術文化センター(中)(0798-68-0255)
9/20(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT(0532-39-3090)
9/21(月・祝)焼津文化会館(054-627-3111)
9/23(水・祝)よこすか芸術劇場(046-823-9999)
9/27(日)北九州市立戸畑市民会館(093-663-6661)
9/29(火)王子ホール(03-3567-9990)

スーパー・ソリスト meets 新日本フィル
第1部:アランフェス協奏曲 他 第2部:カニサレス・フラメンコ・カルテット
9/26(土)すみだトリフォニーホール(03-5608-1212)