山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

ヤマカズが贈る、異世界で生まれた交響曲二題

山田和樹

 日本フィルの2020/21シーズンは、多くの公演が内容変更等の対応を迫られたが、その度に何かしら新しい意味づけをする努力は怠らなかった。その顕著な例は、正指揮者の山田和樹が登場した昨年9月定期。大規模な邦人作品は一旦断念して、代わりに新人作曲家、五十嵐琴未への新作委嘱を行い、ウイルス禍中の新作を生みだしたのである。邦人作品に意欲的な山田と日本フィルの面目躍如であり、芸術的な意義深さも計り知れない。

 そして21/22の新シーズン開始の今年9月。昨年断念した大作=水野修孝の交響曲第4番が今度こそ聴ける。水野は1934年生まれ、20世紀中盤の先鋭的な表現から、ジャズ、ミュージカルまで、多様な作風やジャンルを取り入れた、無二の作風をもつ作曲家である。本公演のために作曲者自身がメッセージを寄せており、交響曲という形式は「ひとつのテーマと楽想を中心に、ジャンルを超えて様々な音楽を同居させて、音楽のフルコースとして聴く人を楽しませることができる」と述べている。2003年作の本作は、その言葉通り多彩な要素が次々と現れるユニークな大作だ。実演で体験できる待望の機会に、作曲者も「オーケストラサウンドの多様な変化をお楽しみください。今回の日本フィルと山田和樹さんに期待しています」と語っている。

 演奏会前半は、19世紀フランスから、ショーソンの唯一の交響曲を。濃密な情念と情熱が横溢する名品で、フランスでも活躍する山田の指揮で聴けるのは嬉しい。演奏機会の稀少な2つのシンフォニー、じっくりと楽しみたい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年9月号より)

第733回 東京定期演奏会【配信あり】【チケット完売】
2021.9/10(金)19:00、9/11(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp