2021年度 武満徹作曲賞受賞者決定! 第1位に根岸宏輔

審査員パスカル・デュサパンはパリからリモート審査

 2021年度 武満徹作曲賞本選演奏会(審査員:パスカル・デュサパン)が、5月30日東京オペラシティ コンサートホールでおこなわれ、同31日に結果が発表された。日本から唯一ノミネートしていた根岸宏輔による「雲隠れにし 夜半の月影」が見事第1位に輝いた。

根岸宏輔 (c) Shion Sakai

 同賞は、世界各国の若い世代の作曲家に新しい音楽作品の創作を喚起することを目指し、東京オペラシティ文化財団が主催する、管弦楽作品を対象とする作曲コンクールで、一人の作曲家が審査にあたるユニークさで世界的にも知られている。今回は、32ヵ国から計91作品の応募があり、そのうち4作品が譜面審査で選ばれ本選演奏会の場で演奏された(演奏:阿部加奈子指揮 東京フィルハーモニー交響楽団)。
 審査員デュサパンは、新型コロナウイルス感染症に係る入国制限措置の影響により来日が叶わなかったが、パリのスタジオ(パレ・デ・コングレ・ド・パリ)と東京オペラシティをつなぎ、高音質・高画質の通信によって本選の演奏を聴く形でリモートによる審査を行った。会場で立ち会った根岸以外の3名の参加者は、デュサパンと同じくパリのスタジオから自作の初演を見守った。

 結果は、以下のとおり。

◎受賞者
第1位 根岸宏輔(日本) 雲隠れにし 夜半の月影(賞金120万円)
第2位 ジョルジョ・フランチェスコ・ダッラ・ヴィッラ(イタリア) BREAKING A MIRROR(賞金80万円)
第3位 ヤコブ・グルッフマン(オーストリア) TEHOM(賞金50万円)
第3位 ミンチャン・カン(韓国) 影の反響、幻覚…(賞金50万円)

 第1位を獲得した根岸は1998年、埼玉県本庄市生まれ。日本大学芸術学部音楽学科作曲・理論コース(作曲)を卒業後、現在は同大学大学院修士課程に在籍し、伊藤弘之氏に作曲を師事。第37回現音作曲新人賞や第31回朝日作曲賞(合唱組曲)などの受賞歴がある。

「2021年度武満徹作曲賞」受賞の言葉(第1位:根岸宏輔)

審査員:パスカル・デュサパン 講評

根岸宏輔さんの《雲隠れにし 夜半の月影》は、形式の流れが分かりやすく自然な方法で表現されていて、楽しめました。音型やフレーズは曲全体を通じて有機的に展開し、巧みにオーケストレーションされ、すべての楽器グループに存在感をもって現れていました。楽器のジェスチャーに対するすぐれた感性および敬意が感じられ、武満徹のスタイルにとても近いと思いました。
ミンチャン・カンさんの《影の反響、幻覚…》では、旋律のパターンの設計が気に入りました。オーケストラの過剰さはなく、むしろシンプルで美しいジェスチャーがやわらかく活き活きと、つねにコントロールされた形で表現されていました。オーケストラの形式はとても優美で、音色が濁ることもなく、美しい、洗練された和声空間が生み出されていました。
ヤコブ・グルッフマンさんの《TEHOM》では、作曲者が全力を傾け、純粋なインスピレーションと、意識的にリスクを取ってオーケストラの表現の限界に挑戦している点が気に入りました。オーケストラをよく知った上でのきわめてヴィルトゥオーゾ的な書法、力強い真の抒情性、そして題材におけるある種のラディカリズムが見られました。
ジョルジョ・フランチェスコ・ダッラ・ヴィッラさんの《BREAKING A MIRROR》では、形式の展開がつねに明瞭かつミニマリズム的な手法で示されていました。オーケストレーションは風通しがよく透明感があり、各楽器グループの扱いに長けていて、しばしばむきだしの音色や圧縮されない豊かな和声が聞かれました。題材は曖昧ではなく、うまく設計され、とても存在感を感じました。
(東京オペラシティ文化財団ウェブサイトより転載)

【On Air 情報】
◎コンポージアム2021 「2021年度武満徹作曲賞本選演奏会」
番組名:NHK-FM「現代の音楽」(毎週日曜AM8:10~9:00)
放送予定日:6月20日(日)、6月27日(日)

【武満徹作曲賞 今後の審査員】
https://www.operacity.jp/concert/award/judge/index.php

●2022年度審査員:ブライアン・ファーニホウ(イギリス)
応募締切日:2021年9月30日(木)18時必着
2022年度武満徹作曲賞本選演奏会:2022年5月29日(日)予定

●2023年度審査員:近藤譲(日本)
●2024年度審査員:マーク=アンソニー・ターネジ(イギリス)

武満徹作曲賞
https://www.operacity.jp/concert/award/