カウフマンの《ウェルテル》など、必見のシーズン後半ラインアップ
METライブビューイング2013/14もいよいよ後半戦。ボロディン《イーゴリ公》、マスネ《ウェルテル》、プッチーニ《ラ・ボエーム》、モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》、ロッシーニ《ラ・チェネレントラ》など様々な国の多彩なオペラが続く。
12世紀ロシアの歴史絵巻である《イーゴリ公》は、ロシアの鬼才ディミトリ・チェルニアコフによる新演出。2009年のボリショイ劇場の来日公演《エフゲニー・オネーギン》で素晴らしい舞台を披露していたように、ロシアものではずすことはないだろう。キャストは、今が旬のロシア系歌手が揃う。特にイーゴリ公の妻ヤルスラーヴナを演じるオクサナ・ディーカに注目。昨年のトリノ王立歌劇場来日公演の《仮面舞踏会》のアメーリアで強い印象を残した。指揮は、ゲルギエフの薫陶を受け、ロシア・オペラを得意とするジャナンドレア・ノセダ。有名な「だったん人の踊り」も楽しみ。
《ウェルテル》は、フランスのマスネが、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』をオペラ化した作品。何と言っても注目は、ウェルテルを歌うヨナス・カウフマン。ワーグナーでもヴェルディでも現代最高の歌唱を聴かせるカウフマンは、フランス・オペラも苦にしない。シャルロットを歌うフランスの名花ソフィー・コッシュは今回がMETデビュー。イギリスのベテラン演出家リチャード・エアの舞台も楽しみだ。
フランコ・ゼッフィレッリ演出の《ラ・ボエーム》はMETでの最高の人気演目のひとつ。その豪華な舞台はニューヨーカーたちの好みだ。特に何百人ものエキストラを用いてパリのカルチェ・ラタンの街角が再現された第2幕は圧巻。歌手は、ヴィットーリオ・グリゴーロ、アニータ・ハーティッグら、永遠の青春讃歌にふさわしいフレッシュな声が揃う。
《コジ・ファン・トゥッテ》での最大の話題は、音楽監督ジェームズ・レヴァインが指揮することだ。レヴァインは1970年代半ばからMETを率いてきた大黒柱。ここ数年、体調を崩し、指揮活動を停止していたが、今シーズン、《ファルスタッフ》を振って、復帰。車椅子に乗っての指揮だったが、レヴァインの復帰はニューヨークの聴衆を歓喜の渦に巻き込んだ。モーツァルトは、ワーグナー、ヴェルディとともにレヴァインが最も得意とするレパートリー。2人の青年が自分の恋人の貞節を試す《コジ・ファン・トゥッテ》は、アンサンブル・オペラだけに、レヴァインは、若手歌手を起用し、一緒に音楽を作っていく。2013年のサイトウ・キネン・フェスティバル松本で《こどもと魔法》のこどもと《スペインの時》の時計屋の女房というまったく違った役柄を演じ分けたイザベル・レナードがドラベッラを歌うのが楽しみ。人気者ダニエル・ドゥ・ニースはデスピーナを演じる。そしていま絶好調の“ロッシーニ歌い”ジョイス・ディドナートと、《オリィ伯爵》でも人気を博したファン・ディエゴ・フローレスが出演する《ラ・チェネレントラ》も楽しみだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2014年4月号から)
Information
METライブビューイング公式ウェブサイト
http://www.shochiku.co.jp/met