東京オペラシティ B→C 中島裕康(箏)

時代やジャンルを超えて、魂の宿る音楽を

C)Ayane Shindo

 21世紀の音楽界に新風を吹き込む奏者の登場である。2010年の片岡リサ以来2人目の箏曲でのB→C出演となる中島裕康は、学校の鑑賞授業で箏曲の魅力にめざめ、東京藝術大学附属高校に進学。もともとドビュッシー、ラヴェルらにも魅せられていた中島は、作曲科の新作初演にも足を運ぶようになり、伝統と現代との懸け橋として活動を展開中だ。今回はすべてソロ作品で、細川俊夫の緊張感のある「夜」を皮切りに、大家・八橋検校の没年に生まれたバッハのリュート作品は、十七絃で披露予定。この楽器の「温かく豊かな響き、重厚感がバッハとよく合う」という。「斬新だが意外とアナログ」な気鋭の山本和智、以前からファンであり、その世界観や空気感に魅了されているという権代敦彦への委嘱新作では、箏という楽器の斬新な側面も味わえそうだ。リサイタルのしめくくりになるのは、松村禎三の十三絃箏のための格調高い名作「幻想曲」。箏と箏曲の可能性を存分に堪能させてくれる一夜に期待したい。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2021年1月号より)

2021.1/26(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp