ボストン大芸術学部などに学んだ中野真理は、数々の登竜門で実績を残し、ソリストとして活躍の一方、後進の指導にも取り組む。今回は、パリ音楽院での試験のために書かれた、フランス近代の佳品に対峙。曲ごとのみならず、同じ曲の中においても、繊細に移り変わる色彩感を、中野は余さず掬い取る。また、ぐっと謳い込む場面はもちろん、技巧的な場面にあっても、決して透明感ある美音がぶれることはない。そして、これらの作品に共通する、独特のエスプリを浮き彫りにしてゆく。フルートの特性を知り尽くす、共演の石橋尚子も見事。饒舌に過ぎぬ、絶妙の好サポートで魅せる。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2021年1月号より)
【information】
CD『エレガンス/中野真理』
タファネル:アンダンテパストラールとスケルツェッティーノ/ゴーベール:ノクターンとアレグロスケルツァンド、バラード/カプレ:夢と小さなワルツ/ルーセル:笛吹き達/エネスコ:カンタービレとプレスト/カミュ:シャンソンとバディネリ/ガンヌ:アンダンテとスケルツォ 他
中野真理(フルート)
石橋尚子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7934 ¥2500+税