トッパンホール開館20周年 2020/2021シーズンラインナップ(10月〜12月)

記念イヤーの殿堂を深く彩る室内楽の豊穣

 質の高さにこだわり抜く“室内楽の殿堂”トッパンホールは今年開館20周年。10月から始まる記念シーズンは、ゆかりの深い顔ぶれを軸にした充実の内容が目を引く。ここでは、そのスタートとなる年内の公演をご紹介しよう。

フォーレをはじめとした濃密なプログラム

 10月1日恒例の「バースデーコンサート」は「ガブリエル・フォーレとともに」(完売)。前半はトッパンホールでの活躍もフォーレの実績も顕著なフランスの“隠れた巨匠”ジャン=クロード・ペヌティエが、夜想曲、舟歌等に加えてあの美品「レクイエム」のピアノ版(興味津々!)を聴かせる。後半はドイツ人グループながらその名を冠したフォーレ四重奏団。25年間不動のメンバーゆえの精緻なアンサンブルで雄弁な音楽を生み出す世界最高峰のピアノ四重奏団が、三たび開幕公演に登場し、ピアノ四重奏曲第2番で円熟期の深奥を知らしめる。さらには同ホールが力を注ぐ“若手育成”の代表としてチェロの岡本侑也が出演。若手随一の技巧と表現力をもつ彼がフォーレ四重奏団のピアノ奏者ディルク・モメルツと奏でるチェロ・ソナタ第2番にも大いに期待したい。

 続いて2組の単独公演も行われる。10月4日のペヌティエのリサイタルは、2019年に反響を呼んだ「ショパン&ドビュッシー」の第2弾。温かく叙情的で時に骨太の筆致をみせる彼のピアノで、「幻想」にちなんだショパン作品とドビュッシーの名品を聴けば、既成概念を超えた楽曲の深淵を実感するに違いない。

 10月6日のフォーレ四重奏団の公演は「結成25周年スペシャル」。今度はフォーレの第1番を聴けるし、ベートーヴェンのピアノ四重奏曲(管楽との五重奏曲 op.16の作曲者自身の編曲)、既演の感銘も記憶に新しい第2番、第1番に続くブラームスの第3番という多彩かつ濃密なプログラムが耳を喜ばせる。

魅力的な名手たちが登場

 代わって11月10日は「クリストフ・プレガルディエン(テノール)&ミヒャエル・ゲース(ピアノ)」。温かく深く大きな歌を紡ぎ出す巨匠と天才リート・ピアノ奏者のコンビは、トッパンホールの歌曲の看板だ。今回は、ベートーヴェンとシューベルトはもとより、明快な曲の中に青春の喜びや感傷がこめられた“秘めたる名作”シューマンのケルナーの詩による「12の詩」が大注目。円熟の至芸を終始堪能できるのはむろん言うまでもない。

 12月4日は「ユリア・フィッシャー(ヴァイオリン)&ダニエル・ミュラー=ショット(チェロ)」(完売)。欧州では早くから“新女王”的存在だったフィッシャーは、04年に同ホールで日本初リサイタルを行い、16年には風格漂う演奏で満場を魅了した。今回も豊麗・艶美なヴァイオリンを満喫したい。ミュラー=ショットはドイツの先輩格で芳醇な音色と堅牢な技巧の持ち主。今年2月にはムターとの共演で日本の聴衆に凄腕を印象付けた。プログラムはヴァイオリン&チェロの2大名曲=コダーイとラヴェルの作品が主軸だが、フィッシャーのバッハ無伴奏、そして二刀流で知られる彼女のピアノまで聴ける。CDでも精緻で奔放な快演を展開しているデュオのみならず、何粒も美味しい公演だ。

 12月16日は「郷古廉(ヴァイオリン)/ホセ・ガヤルド(ピアノ)」。新世代の奏者中屈指の実力者とアルゼンチン出身の好漢の初共演は、プーランクからラヴェルに至る民族的なプログラムが要注目。剛毅で切れ味鋭い郷古がこうした演目で才を発揮するガヤルドと組んで起こす新たな化学反応が、実に楽しみだ。

 また、数多のスターを輩出してきた「ランチタイム コンサート」には、10月にヴァイオリンの俊英・荒井里桜、12月にフォルテピアノの旗手・川口成彦が出演する。新シーズンもかようにトッパンホールの公演から目を離すことができない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年8月号より)

*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴う海外からの入国制限の継続により、アーティストの来日見通しが立たないことから、10月の3公演は開催中止となりました。(9/11主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。