日本フィルハーモニー交響楽団「第九」

今年12月、これ以上熱い“歓喜の日”はない!


 12月なのに暑い、いや熱い!! 日本フィルの年末「第九」を振るのが小林研一郎と広上淳一とくれば、会場の温度は急上昇必至。「苦悩を経て歓喜へ」のメッセージを体感し、魂を揺さぶられるような感動を味わい、行く年来る年に思いを馳せる…聴衆が年末「第九」に求めるものはすべてここにある。あとは公演日を選ぶだけ…では話が終わってしまうので、もう少し補足しよう。
 “炎のコバケン”は70歳を超えてますます意気盛ん。「第九」ならばその情熱的表現に深い情感を加えた円熟ぶりが、明確にわかるだろう。55歳の広上は、指揮者としてちょうど脂が乗る頃合い。ただ京都市響の常任指揮者就任以降、首都圏で聴ける機会が若干減っているので、その意味でも聴き逃せない。もちろん、入魂のエネルギーで濃密に迫るコバケンと、熱気の中に躍動感やエスプリを湛えた広上の個性の違いもポイント。また公演日によって錦織健以外のソリストが異なるし、「第九」の前曲が、コバケンの回はパイプオルガン(独奏:長井浩美)によるバッハ2曲、広上は生誕200年の掉尾を飾るワーグナー「ジークフリート牧歌」なので、これもお好みで選べる。
 日本フィルは、今年9月のインキネン指揮による《ワルキューレ》第1幕で、ドラマティックな名演を繰り広げ、今年多く演奏された同曲の中でも最上位の賞賛を獲得した。それゆえ劇的な「第九」への期待度はいつも以上に高く、同楽団にゆかりの深い2人が、充実顕著な今の日本フィルからいかなる音楽を引き出すか? が最大の見どころとなる。しかしこうなると、両方の公演に行くのがベストかもしれない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年12月号から)

指揮:小林研一郎
★12月19日(木)、23日(月・祝)、28日(土)・東京芸術劇場
 26日(木)・横浜みなとみらいホール
 27日(金)・サントリーホール

指揮:広上淳一
★12月14日(土)・横浜みなとみらいホール
 15日(日)・サントリーホール
問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp