デイヴィッド・ハリントン(クロノス・クァルテット芸術監督/ヴァイオリン)

民族やジャンルの壁を越え活躍する“闘う弦楽四重奏団”

左より:ジョン・シャーバ、サニー・ヤン、ハンク・ダット、デイヴィッド・ハリントン
C)Jay Blakesberg

 1973年の結成以来、半世紀近くにわたるボーダーレスな活動をとおして弦楽四重奏のイメージと可能性を更新し続けてきたクロノス・クァルテットが、今年9月から10月にかけて来日公演をおこなう。日本でのコンサートはなんと17年ぶりということもあり、昨年末の情報解禁とともにネット上では大きな話題となった。2月にサンフランシスコで会ったリーダーのデイヴィッド・ハリントンも「本当に大好きな日本で久しぶりに演奏できるので、全員が興奮してるんです」と喜んでいた。

ボーダーレスな活動は健在

 ヴァラエティ豊かなプログラムが、彼らのキャリアの長さと多彩さを物語っている。たとえば東京オペラシティ コンサートホールでは、クロノスの代名詞とも言うべきジョージ・クラム「ブラック・エンジェルズ」からフィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒ、さらにはジョン・コルトレーンやザ・フー、ローリー・アンダーソンといったジャズやロック系の曲までが予定されている(9/27,9/28)。まさに音楽の架け橋であり、灯台だ。

「そう言ってもらえてうれしいです。架け橋や灯台としての役割を果たすことがクロノスの仕事、あるいは責務のひとつだと考えてきたので。私は12歳の時に音楽家になると決心し、歳を重ねる中で多くの音楽に触れてきました。様々な声、様々な楽器、様々な地域がもたらす音楽…それらが常に、継続的に、クロノスにエネルギーを与えてくれるのです。偏見を持たずに耳を澄まし、自由な想像力を保ち、音楽がその磁力を発揮できるようにすることが我々の責務です。音楽家同士、あるいは音楽家と聴衆がつながって新しい関係を構築する可能性をクロノスは常に探っているのです」

テリー・ライリーとの繋がり、そして映像とのコラボレーション

 新曲の委嘱や共演などを通じてクロノスはたくさんの“新しい関係”“新しい可能性”を築いてきたわけだが、なかでも、「クロノスにとって彼の作品はいくつあっても多すぎることはありません」とハリントンが語るテリー・ライリーとの関係は特別だ。昨年も、NASAのボイジャー計画25周年を記念したテリー・ライリーの大曲「Sun Rings」がCD化された。今回は、神奈川県立音楽堂でその全曲が演奏される(10/3)。

「NASAから最初にこの話をもちかけられた時、作曲家として委嘱すべきはテリー以外いないと確信しました。私は常々、世界で最も寛大で、惜しみなくすべてを与えようとした作曲家はシューベルトだと思ってきましたが、この『Sun Rings』は、まさにシューベルトの作品にみることのできる寛容さを内包した作品だと思います」

 彩の国さいたま芸術劇場での演目「A THOUSAND THOUGHTS」も必見だ(10/2)。これは、クロノスのライヴ・ドキュメンタリー映画とその監督サム・グリーンによる生ナレーションにクロノスの演奏が合体したメディア・ミックス・ワークで、「Sun Rings」同様、日本でのライヴはもちろん初めてだ。

「これはコンサートなのか、レクチャーなのか、それとも映画なのか…と私も最初は戸惑いましたが、その全部が同時に起きるんです。クロノスが今までに取り組んできたものを超えた壮大かつ神秘的な作品と言っていい。私たちのことをまったく知らない観客も含め、多くの人々にとって価値あるものを生み出すという点において、監督のサムはクロノスよりずっと先を行っているように思われます」

 あらゆるボーダーを越えてきた“闘う弦楽四重奏団”による17年ぶりの来日コンサートは、彼らが今なお最前線に立っていることを私たちに再確認させてくれるはずだ。
取材・文:松山晋也
(ぶらあぼ2020年5月号より)

クロノス・クァルテット JAPAN 2020
2020.9/27(日)15:00 東京オペラシティ コンサートホール(03-5353-9999) 4/25(土)発売
9/28(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(チケットスペース03-3234-9999) 4/25(土)発売
9/30(水)19:00 盛岡市民文化ホール(小)(019-621-5100) 6/4(木)発売
10/2(金)19:30 彩の国さいたま芸術劇場(SAFチケットセンター0570-064-939) 5/15(金)発売
10/3(土)17:00 神奈川県立音楽堂(チケットかながわ0570-015-415) 4/25(土)発売
10/4(日)16:30 八ヶ岳高原音楽堂(0267-98-2131)
http://ozawa-art.com/concert/421/ 
※公演によりプログラムは異なります。日本ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

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