エレキとクラシックを自在に行き来するユニークなギタリスト、大坪純平。初のソロCDはコスモポリタニズムの権化とも形容すべき無国籍性、そしてそれと相反するような土俗性を洗練された技法の内に封じ込めた作品を書き続ける久留智之の作品集。エレキも弾くためなのか、大坪の演奏はいわゆるクラシックギター奏者とはいささか趣が異なり、それはソリッドな音色と鋭敏かつ自在なリズムの変容といった点に確かめられる。そうした美質が最大限に生かされた例が「タッピング・コナックル」だろう。と同時に懐の深い音楽性は最後の「古代より」で十全に発揮される。このボキャブラリーの多彩さ。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年5月号より)
【information】
CD『オーガニック・モーションズ〜久留智之ギター作品集/大坪純平』
久留智之:オーガニック・モーションズ3、地上にひとつの場所を、アラベスコ・マジコ、タッピング・コナックル、古代より
大坪純平(ギター)
松岡麻衣子(ヴァイオリン)
間部令子(フルート)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9027 ¥2800+税