頽廃と耽美に彩られた時代を名手たちが描く
リクライニング・コンサートをはじめ、独自の企画が際立つHakuju Hall。演奏家自身のプロデュースによるシリーズが多くあるのも、個々人との結びつきを大切にするこのホールならでは。その名シリーズのひとつが「小林美恵 華麗なるヴァイオリンの伝説」である。
ロン=ティボー国際コンクール優勝など華麗な経歴はもちろんのこと、数多くの名演を重ねて活躍を続ける、日本を代表するヴァイオリンの名手である小林。彼女が2018年から開始した本シリーズは、「歴史・アート・社会など、多彩な角度からヴァイオリンの神秘と魅力を徹底解剖」する、意欲的かつ重厚な内容で好評を博している。
第5回「クリムトの幻影」はウィーンがテーマとなる。東方と西方が交わる“民族・文化の十字路”でもあった大都市で、19世紀末からは画家クリムトの作品に象徴されるような耽美と爛熟の文化が生まれた。作家・文化芸術プロデューサーの浦久俊彦のナビゲートで、多角的に文化への理解を深められるステージとなるだろう。世界的名手との共演経験豊富な名ピアニスト、上田晴子が出演するのも嬉しい。
演目はまずクライスラー、マーラー、シェーンベルクと、同地を代表する3人の作品が並ぶ。マーラーは交響曲第5番アダージェットで、原曲の世界をヴァイオリン版で新鮮に堪能する。シェーンベルクの重要作「幻想曲」での小林の構築にも期待。メインはマーラーと親交があったR.シュトラウスの華やかなソナタ。小林と上田の充実の演奏で、爛熟のウィーンに思いを馳せるステージとなる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年3月号より)
2020.5/24(日)15:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp