尾高忠明&大阪フィルの4月定期は“大作”が定番だが、昨年演奏されたマーラー「9番」のライヴCDがリリースされた。冒頭第1主題は優しい表情が特徴的で、次第に諸動機が錯綜して複雑になって頂点を迎える。この一連の最初の部分が早くも、素晴らしく感動的だ。大編成のオケとはいえ、テクスチュアは室内楽的で、丁寧に作られ、とても精緻な彫琢が重ねられて、極めて美しい。楽しげでありながら、物憂げな第2楽章、軽快に始まり次第に追い込むブルレスケ、そして音楽美の究極の姿が連綿と続く終楽章。尾高&大阪フィルの新境地を世に問う清新なマーラーだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2020年3月号より)
【information】
CD『マーラー:交響曲第9番/尾高忠明&大阪フィル』
マーラー:交響曲第9番
尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団
収録:2019年4月、フェスティバルホール(ライヴ)
フォンテック
FOCD-9828/9(2枚組) ¥3500+税