佐渡裕、交響曲第5番に次ぐトーンキュンストラー管とのマーラーは「復活」。オケの柔和な響きを十全に活かし、決して力ずくに叫ばない美しい演奏。しかしそこは佐渡、緩急に富んだテンポ設定―殊に両端楽章―でこの大曲を見通しよくダレずに聴かせることに成功している。より大向う受けを狙った「派手な」演奏はあるだろうが、最近の佐渡の成熟はここでそういう次元を突き抜けた演奏を提示しうる段階にまで達している。声楽陣も優秀で、特にメゾソプラノのクールマンの正確かつ情感に満ちた歌唱を特筆。スロヴァキア・フィル合唱団も洗練一本槍ではない豪胆な迫力を示す。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年2月号より)
【information】
CD『マーラー:交響曲第2番「復活」/佐渡裕&トーンキュンストラー管』
マーラー:交響曲第2番「復活」
佐渡裕(指揮)
ダニエラ・ファリー(ソプラノ)
エリーザベト・クールマン(メゾソプラノ)
スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団
トーンキュンストラー管弦楽団
収録:2019年5月、ウィーン(ライヴ)
エイベックス・クラシックス
AVCL-84104〜5(2枚組) ¥2000+税