日本語を”歌う”のは、難しい。相当の名手でも、言葉がヴィブラートの影に隠れてしまい、何と歌っているのか、解らないことも。しかし、小林沙羅は、そんな課題など、楽々とクリア。それどころか、「小さな空」にある、「真っ赤」。続く「うみ」での「大きい」…言葉ごとに纏わせるニュアンスを変え、様々な色彩やスケール感を与えてゆく。さらに、「お六娘」など、演劇性も踏まえた、自在な歌い回し。谷川俊太郎が彼女のために作詞し、小林が作曲した「ひとりから」には、自身の内面も投影。時にはっとする透明感で魅せる、ピアノの河野紘子らバックも好演。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年1月号より)
【information】
CD『日本の詩/小林沙羅』
武満徹:小さな空、死んだ男の残したものは/井上武士:うみ/山田耕筰:この道、赤とんぼ/岡野貞一:故郷/中田章:早春賦/橋本国彦:お六娘/早坂文雄:うぐひす/越谷達之助:初恋/瀧廉太郎:荒城の月/中村裕美:或る夜のこころ/小林沙羅:ひとりから 他
小林沙羅(ソプラノ)
河野紘子(ピアノ) 澤村祐司(箏) 見澤太基(尺八)
日本コロムビア
COCQ-85476 ¥3000+税