邦人作品の紹介に情熱を傾ける開拓者
現代の音楽や日本人作品の演奏に情熱を注ぐといっても、ヴィオリストの伊藤美香ほど徹底している奏者は稀少だろう。ヴィオラの楽曲はもちろんのこと、日本の知られざる作品を幅広く取り上げる「オーケストラ・トリプティーク」の団長を務めるなど、ソロ作品から大曲まで、あらゆる日本の作品の紹介に尽力している。
その伊藤が満を持して東京オペラシティのB→Cに登場。やはりC(コンテンポラリー)の選曲が際立つが、いずれも面白く聴ける作品ばかり。J.S.バッハと、マルティヌーの明るく美しいソナタの他は、すべて邦人作品。直接交流があった鈴木行一の遺作「響唱の森」、眞鍋理一郎の「長安早春賦」のほか、伊藤の卓越した演奏に触発されて彼女のために書かれた西村朗の「キメラ」は注目。最後は矢代秋雄の若かりし日の隠れた名作ソナタを。
共演は作曲家にしてピアノの名手、新垣隆。創造の現場を誰よりも知る新垣と共に、伊藤の名技と作品への深い思いが、「隠れた名品」の真価を明らかにしていく。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年11月号より)
2019.11/12(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp/