波多野睦美 歌曲の変容シリーズ 第13回 3人の作曲家 × 3人の演者〜モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルト〜

女性3人が創り出す予測不能の美学


 2005年にスタートした、メゾソプラノ波多野睦美の「歌曲の変容シリーズ」(王子ホール)は、さまざまな切り口のテーマで歌の諸相を映し出し、その本質を探り当てて見せてくれるような好企画。その第13回となる11月の公演は、「3人の作曲家 × 3人の演者〜モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルト〜」。

 最近、コンサートや録音で、高橋悠治との「冬の旅」に継続して取り組んでいるが、それでもドイツ歌曲を歌う波多野はレアだろう。それだけでも聴き逃せない感がひしひしと迫ってくるのだが、まだまだいろいろ用意されているのがこの「変容」シリーズ。あなたも公演タイトルの「3人の演者」というアピールが気になったはず。

 まず、共演ピアニストは台湾の注目株ジュリア・スーだ。ピーター・ゼルキンとのデュオは世界中で引っ張りだこ。16年に初来日して、武満徹の没後20年コンサートで高橋悠治との2台ピアノで「夢の引用」を弾いた。二人は昨年11月にドビュッシーで初共演。波多野は彼女を「自然な響き。温かい海の水のような音。鮮やかで繊細な音楽に魅了された」と評している。今回は歌曲の伴奏だけでなく、ソロでベートーヴェンの「月光」と「告別」も弾く。

 そしてもう一人。コンテンポラリーダンスの辻田暁が音楽とコラボする。現時点で発表されている辻田の共演パートはシューベルトの「魔王」。三者がどんな絡み方を見せてくれるのか、ダンスの出番が他にもあるのかは、当日会場でのお楽しみだ。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年11月号より)

2019.11/12(火)19:00 王子ホール
問:王子ホール チケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp/