【会見レポート】世界を魅了するエイフマン・バレエ、東京公演がいよいよ開幕

 バレエ大国ロシアにおいて、常に話題の中心となっている「エイフマン・バレエ」が、芸術監督で巨匠振付家として名高いボリス・エイフマンに率いられて21年ぶりに来日した。7月18日からの東京公演を前に、ボリス・エイフマンと、上演演目の一つ『ロダン〜魂を捧げた幻想』に出演するダンサー、オレグ・ガブィシェフ、リュボーフィ・アンドレーエワ、リリア・リシュクが登壇し会見が行われた。
(2019.7/17 駐日ロシア連邦大使館 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左より:リリア・リシュク、ボリス・エイフマン、リュボーフィ・アンドレーエワ、オレグ・ガブィシェフ

 エイフマン・バレエは、1977年に振付家ボリス・エイフマンによって、サンクトペテルブルクにて創設された。クラシック音楽からロック、ポップスまで巧みな選曲に、伝統的なロシア・バレエとエイフマン独自の現代的な振付を融合した作品を数多く創作してきた。ペレストロイカの転換期であった1990年に初来日。エイフマンは、「ソ連外でやっと公演を行えるようになった時に日本公演ができたことは大きな贈り物でした。日本での成功は、私たちが歩み始めたロシア・バレエの新しい方向性が正しいものだと自信を持つことができた大切なツアーでした」と振り返る。

 来日公演は1998年以来となるが、エイフマンは「20年前とは全く違う、新しいカンパニー」だと強調する。
「今回の来日にあたり、『エイフマン・バレエが20年の時を経て日本に戻ってきた』と言われますが、それは違います。 日本に戻ってきたのは私、ボリス・エイフマンです。今回来日したのは、皆さんが知らない、“新しい”エイフマン・バレエです。私たちのバレエ団は、皆さんが愛してやまないロシア・バレエの伝統と、深い物語性と心理描写がなされた“心理バレエ”としての革新性、どちらもあわせ持っています」

ボリス・エイフマン

左:『アンナ・カレーニナ』 右:『ロダン』
2枚ともに(C)Souheil Michaeil Khoury

 東京公演では、近代彫刻の父オーギュスト・ロダンの芸術創作と生き様を描く『ロダン〜魂を捧げた幻想』(7/18、7/19)と、チャイコフスキーの音楽に、ロシアの文豪トルストイによる同名作を原作とした、カンパニーの代表作『アンナ・カレーニナ』(7/20、7/21)を上演する。
「クラシックでも現代バレエでもなく、ドラマ性、心理描写を融合した独自のスタイルとレパートリーを持っているのがエイフマン・バレエです。作品は常に改訂をしながら、その時々にそぐうものとして上演しています。今回上演する2演目は、バレエ団とバレエ芸術の可能性を感じていただける作品です。エイフマン・バレエのレパートリーと芸術は、日本の皆さんの心を必ず捉えるに違いないと確信しています」

 男性182センチ以上、女性172センチ以上と高身長で、才能豊かなダンサーたちが集結しているエイフマン・バレエ。「本当に素晴らしい芸術家たちが揃っています。ダンサーたちは技術的に優れた踊りを見せてくれるだけでなく、素晴らしい演技をしてくれる“俳優”なのです。彼らのようなアーティストは他にはいません」と絶賛する。

左より:リリア・リシュク、ボリス・エイフマン、リュボーフィ・アンドレーエワ、オレグ・ガブィシェフ

 登壇した3名のダンサーは『ロダン〜魂を捧げた幻想』に出演する。作品やバレエ団についてそれぞれ語った。

 今回が初来日となるリュボーフィ・アンドレーエワは、ロダンの弟子であり愛人であったカミーユを踊る。
「日本ではロシアの古典バレエを愛すると聞いていたので、私たちのバレエが受け入れられるのか不安でした。ですが15日に静岡での『ロダン』の公演を終え、お客様から温かく受け入れ、理解してもらえ安堵しています。
 エイフマンさんは、アーティストから表現を引き出し、観客の心を動かすことができる手腕の持ち主です。私は、エイフマン・バレエの『赤いジゼル』を観て言葉を失うほどの衝撃を受け、バレエ団に入団しました。踊るたびにいつも違う感情が生まれ、新しい役、作品によって、自分の新たな一面を発見できるのです。私は舞台でヒロインになりきって踊ることを意識しています」

リュボーフィ・アンドレーエワ

 エイフマンからの信頼が厚いオレグ・ガブィシェフは、ロダン役で登場。
「エイフマン・バレエのダンサーとして、“踊り”という言語で話せることを非常に誇りに思います。『ロダン』を踊り続けて8年が経ちますが、その間、演目を磨き続け、心情表現だけを考えて踊ることができるようになりました。踊りにはゴールがなく、公演を重ねるごとに別のニュアンスの発見があります。
 エイフマン・バレエの作品を観たとき、私の中で新しいバレエの世界が広がりました。ダンサーが全力を捧げ、完全燃焼するところに釘付けになりました。コール・ド・バレエは決して群舞という言葉では片付けられない、彼らも主役の一人として存在しています。エイフマン・バレエはアーティストとして大いに成長できる場であることも魅力です」

オレグ・ガブィシェフ
 

 ワガノワ・バレエ・アカデミー出身のリリア・リシュクは、ロダンの内縁の妻ローズ・ブーレを踊る。
「『ロダン』は、ロダンとカミーユという優れた彫刻家たちのありふれた伝記物語ではなく愛憎劇です。私が演じるローズは、20歳の時にロダンと恋に落ち、それ以来、彼の元を離れたり戻ったりと、彼女の人生の全てを捧げた犠牲愛が描かれています。弟子のカミーユとともに、ローズもロダンのインスピレーションの源だったことを作品を通して感じ取っていただきたい。
 エイフマン・バレエを観た時、エイフマンさんについていきたい、一緒に夢をみたい思いました。私は子どものころから夢見ていたドラマティックなバレエを踊ることがここで叶いました。多くのインスピレーションを得て、とてもやりがいを感じています」

リリア・リシュク

 「いまインターネット、映画、テレビなど多くの娯楽がある中で、それらを措いてわざわざチケットを買って劇場に足を運んでくださる観客がいます。彼らを惹きつけるのは、人間の身体を通して表現される人の生き生きとした感情です。私たちが世界で受け入れられているのは、身体言語で人の心を表現できるからです。言葉や文化、宗教が違っても、“魂”や”心”は世界共通。バレエ芸術は人々の心を結び付ける、いま世界で求められているものだと思います。新しいエイフマン・バレエは、日本のお客様の探究心を満たしてくれることでしょう」(エイフマン)
 この20年間でアジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界中で、個性的なレパートリーを持ち大きな成功を収めたエイフマン・バレエ。世界を魅了するボリス・エイフマン、バレエ団の“今”を劇場で堪能したい。

エイフマン・バレエ
『ロダン〜魂を捧げた幻想』  2019.7/18(木)、7/19(金)各日19:00
『アンナ・カレーニナ』 2019.7/20(土)17:00、7/21(日)14:00
東京文化会館
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp/eifman2019/