舘野 泉 & ラ・テンペスタ室内管弦楽団 〜2つのピアノ協奏曲〜

日本とフィンランドの国交樹立100周年を讃えて


 20代後半でフィンランドに移住し、以来、日本とフィンランドの架け橋として多彩な活動を行う舘野泉。左手のピアニストとして活動するようになった82歳の今も、レパートリーの拡張や新作初演に精力的に取り組む。日本フィンランド国交樹立100周年の今年は、親善大使に就任。ラ・テンペスタ室内管弦楽団と記念公演に出演する。同管弦楽団は、舘野の息子であるヤンネ舘野がコンサートマスターを務め、フィンランドの仲間たちを中心に結成されたもの。

 取り上げるのはまず、シベリウスやラウタヴァーラ、ノルドグレンという、19世紀後半から21世紀初頭に生きたフィンランドの作曲家。ノルドグレン「左手のためのピアノ協奏曲第3番」は、小泉八雲の怪談『死体にまたがった男』から着想を得て書かれた作品で、舘野によれば「人間の中にある恐怖、絶望、苦しみが音楽で表現され、最後は静かに“それでも世界は過ぎてゆく…”ということが示される」。

 日本人作品では、舘野が「ピアノが人生の一部であることを感じさせる曲を書く人」と評する熊本出身の作曲家、光永浩一郎の「左手ピアノと室内管弦楽のための『泉のコンセール』」が演奏される。2016年の熊本地震をまたぐ時期に書かれた作品で、最後は生きる希望を感じさせる音楽で閉じられるという。

 いずれもこの公演でなくてはなかなか聴けないうえ、舘野とラ・テンペスタ室内管弦楽団の共演で聴くことに意義のある作品ばかり。初来日となる気鋭、エーロ・レヒティマキの指揮にも注目したい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2019年5月号より)

2019.5/25(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
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