舘野 泉(ピアノ) バースデー・コンサート

左手のために書かれた委嘱4作品を初演

C)山岸 伸

 82歳を迎える舘野泉が「バースデー・コンサート」を開く。脳溢血で倒れ、「左手のピアニスト」として復帰してから15年。舘野の揺るぎない音楽への愛、優しさと強さに満ちた人間性、しなやかで深みある演奏に惹かれる世界中の作曲家たちが、彼に「左手のための」ピアノ作品を捧げ、90曲もの新作が生まれてきた。
 この「バースデー・コンサート」では、そうした一連の作品が演奏される。今年8月に急逝した作曲家・末吉保雄も、舘野のために作品を残した一人。藝大同期生であり、深い親交のあった末吉の作品「土の歌・風の声」「いっぱいのこどもたち」を、当初の予定を変更してプログラムに加える。さらに、没後10年となるフィンランドの作曲家で、全ピアノ曲を舘野に捧げたノルドグレンの「振袖火事〜小泉八雲の『怪談』によるバラードⅡより」も取り上げ、二人の大切な友人を偲ぶ。
 コンサート後半は3曲の初演作品。一柳慧の「FANTASIA 左手のために」、吉松隆の「金魚によせる2つの雨の歌」、そしてcobaの「謝肉祭 左手のピアノとフルートのために」だ。いずれも「舘野泉左手の文庫(募金)」助成作品として書かれた意欲作である。coba作品はフルートとのデュオ。共演者には、ジャンルの垣根を越えて幅広いレパートリーで注目されるフルーティスト・藤井香織が登場する。「左手のためのピアノ音楽」という確固たる一つの音楽的世界を築いた舘野の響きに、改めて耳を傾けたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年11月号より)

2018.11/9(金)19:00 東京文化会館(小)
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
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