沼尻竜典(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

ベルクとマーラーの濃密で劇的なる世界


 日本フィルの12月の東京定期演奏会には、沼尻竜典が登場する。オペラでの活躍が著しく、2013年から17年までドイツのリューベック歌劇場の音楽総監督を務め(現在は首席客演指揮者)、日本では07年にびわ湖ホール芸術監督に就任し、現在《ニーベルングの指環》全4作上演に取り組んでいる。オーケストラでは、トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアを率い、名古屋フィルや群馬交響楽団のシェフを歴任。日本フィルとの関わりも深く、03年から08年まで正指揮者のポストにあった。
 今回は、沼尻が最も得意とする後期ロマン派から新ウィーン楽派にかけての作品を取り上げる。ベルクの「歌劇《ヴォツェック》より3つの断章」(第1幕2&3場、第3幕第1場、第3幕第4&5場)では、沼尻のオペラ指揮者としての実力が発揮されるであろう。メインはマーラーの交響曲第1番「巨人」。この9月にびわ湖ホールで交響曲第8番「千人の交響曲」を振るなど、マーラー指揮者としての評価も高い沼尻が「巨人」をどのように描くのか、楽しみだ。
 「歌劇《ヴォツェック》より〜」では、ソプラノのエディット・ハラーが独唱を務める。イタリア生まれだが、ワーグナー歌手として知られ、バイロイト音楽祭、ウィーン国立歌劇場、バイエルン州立歌劇場で活躍。日本フィルとも13年の《ワルキューレ》第1幕(ピエタリ・インキネン指揮)でジークリンデ役を歌い、絶賛を博した。今回の“マリー役”にも期待したい。
文:山田治生
(ぶらあぼ2018年11月号より)

第706回 東京定期演奏会
2018.12/7(金)19:00、12/8(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
http://www.japanphil.or.jp/