小泉和裕(指揮) 九州交響楽団

記念イヤーに鳴り渡る史上最大の響き

小泉和裕 C)Ivan Malý

 創立65周年を迎えた九州交響楽団による今年度の定期演奏会のプログラムは、実に意欲的だ。中でも音楽監督の小泉和裕が振る3公演には、すべて“九響初演”作品が含まれている。そして曲の規模と内容から文句なしに中核を成すのが、9月定期のマーラー「千人の交響曲」である。8人の独唱者、二組の混声合唱と児童合唱、5管編成にオルガンを加えた大管弦楽による本作は、特別な機会にのみ登場する記念碑的な演目。九響初演=地元プロオケの演奏で九州に鳴り渡る史上初の機会ゆえ、記念イヤーにこの上なく相応しい。
 1989〜96年に首席指揮者、2013年から音楽監督を務める小泉和裕は、九響の特質を知り尽くすマエストロ。現在、名古屋フィル、都響、神奈川フィルにもポストを持つ引く手数多の存在であり、円熟味を増した近年は、毎回手応えのある音楽を聴かせている。よって今回も、クオリティアップが顕著な九響と共に、充実の名演を展開してくれるに違いない。
 曲は2部から成り、創造主を讃える第1部は圧倒的な大音響が続く。ここは九響と九響合唱団の底力が聴きものだ。第2部は「ファウスト」の終幕の場を描いたオペラやオラトリオのような音楽。そこで今回は、並河寿美、大隅智佳子、吉原圭子(以上ソプラノ)、加納悦子、池田香織(以上アルト)、望月哲也(テノール)、小森輝彦(バリトン)、久保和範(バス)という、全員二期会に所属し、マーラー作品での実績も抜群の豪華歌手陣が威力を発揮する。
 マーラーが「宇宙が震え、鳴り響く」と記した大作の満を持しての上演。地元以外のファンもぜひ注目したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年8月号より)

第370回 定期演奏会
2018.9/22(土)15:00 福岡シンフォニーホール
問:九響チケットサービス092-823-0101 
http://kyukyo.or.jp/