ユベール・スダーン(指揮) 東京交響楽団

現代における古典派演奏のスタンダードを実現


 快進撃が続く東京交響楽団のもとに、この9月、前・音楽監督のユベール・スダーンが帰ってくる。現在の音楽監督ジョナサン・ノットがオーケストラにもたらしたものは限りなく大きいが、これもスダーンという前任者が礎を築いてくれたからこそ。スダーンとの名コンビは楽団のかけがえのない財産だ。
 今回、スダーンが指揮するプログラムは原点回帰とでもいうべきウィーン古典派プログラム。ハイドンの交響曲第100番「軍隊」、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番(独奏は堀米ゆず子)、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。3曲ともに名曲中の名曲であり、いずれも晴れやかで快活な楽想を持つ。
 音楽監督時代のスダーンはウィーン古典派の作品をたびたび取り上げて、東響のアンサンブル能力を向上させた。基本的なレパートリーを身に着けることで、オーケストラの足腰を鍛え上げたといってもいいだろう。スダーンはしばしば金管楽器やティンパニにピリオド楽器を用い、歴史的な奏法にも配慮しながら、現代のオーケストラにふさわしい古典派演奏のスタイルを追求してきた。その躍動感にあふれ、精彩に富んだ演奏は、いつも大きな喜びをもたらす。
 名手堀米ゆず子のソロにも注目。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は、シャーンドル・ヴェーグ指揮のカメラータ・ザルツブルクと全集を録音するなど、得意のレパートリー。円熟味豊かな演奏を披露してくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年8月号より)

第663回 定期演奏会 
2018.9/22(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第67回 
2018.9/23(日・祝)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
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