第10回 浜松国際ピアノコンクール記者発表

 2018年11月8日から25日にかけて行われる第10回 浜松国際ピアノコンクールの記者発表が6月1日に都内で開催され、実行委員会長を務める鈴木康友・浜松市長と審査委員長の小川典子が登壇した。
(2018.6/1 都内 Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE)

鈴木康友(左)、小川典子

 同コンクールは、浜松市の市制80周年にあたる1991年にスタート。これまでに、後にショパン国際ピアノコンクールで優勝したラファウ・ブレハッチやチョ・ソンジンなど数々のスターを生み出し、国際的にも高い評価を得ている。また、同コンクールをモデルとして若きピアニストたちの奮闘を描いた恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』が、直木賞と本屋大賞をダブル受賞したことでも話題を呼んだ。今年は第10回の節目を迎える。
 小川は、安川加壽子、小林仁、中村紘子、海老彰子に続いて5代目の審査委員長就任となる。国際的な演奏活動の傍ら、指導者としても、英国ギルドホール音楽院教授、東京音楽大学特任教授として後進の指導にもあたり、シドニー国際ピアノコンクールなどで審査委員も務めている。5月下旬にDVDによる予備審査を終えたばかりの小川は、以下のように手応えを語った。
「コンクール専門委員4名で、361通りの渾身の演奏を聴き、審査は困難をきわめました。匿名性を重視し、名前・経歴・国籍も伏せ、審査中は一切のディスカッションをせず、映像と音だけで審査を行いました。録音によって音の特徴も異なるので、耳を調整しながら聴くのに苦労しました。審査のポイントとしては、より深い表現をできているか、どれだけ鍵盤を自分のものにして、表現のツールとして使っているか、という点を重視しました。11月の本番は、大変なレベルになるだろうと予想しています」

 この日の会見では、出場承認者の発表も行われた。37ヵ国1地域382名の応募者の中から、21ヵ国1地域の95名が出場を承認された。平均年齢は23.0歳(最年少:14歳、最年長:30歳)で、日本国籍が25人を占めている。
 前回優勝者のアレクサンダー・ガジェヴによるオープニングコンサート(11/7)に引き続き行われる第1次予選(11/9〜11/13)は、練習曲1曲以上を含む一人20分以内のステージ。第2次予選(11/15〜11/17)は日本人作曲家(佐々木冬彦)による新作を含む40分以内のプログラム。第3次予選(11/19〜11/20)では、課題曲に室内楽が含まれる。本選(11/23〜11/24)では、高関健指揮の東京交響楽団との共演で協奏曲を1曲演奏。優勝者には、賞金300万円のほか、国内外での演奏ツアーが副賞として与えられる。

 第1次予選課題曲における練習曲の復活について、小川は「お客様から練習曲を聴きたいという声が多かったということもあるのですが、今の若いピアニストたちがいかにテクニックのレベルが高いかをわかっていただける良い機会になるのではないかと思います」と述べた。また、第2次予選課題曲のほか、本選の協奏曲の選択肢としても日本人作曲家の作品が含まれていることについては、「浜松でこれだけの大規模なコンクールが行われるのですから、日本人の作品をもっと積極的に弾いてほしいと思っています。ヨーロッパの作品も、アメリカの作品も、日本で書かれた作品も同じ土俵にあるんだという、私の音楽家としての意思表示でもあります」と力強く語った。

小川典子

 また、出場者に向けて、次のようにエールを送った。
「浜松から世界へ羽ばたいてほしいというのが一番です。課題曲にかなり自由な部分がありますので、コンクールを自分の色に染めることも可能。ですから、できるだけ個性を発揮して世界にそのまま通用する演奏家が現れれば良いなと思っています。ピアニストの仕事は体力を必要とするものですが、コンクールも第1次予選から本選まで長丁場で、プロの演奏家のようにしょっちゅう弾かなければいけませんので、強さを兼ね備えたピアニストを見つけることができればと思っています」

 なお、計11名の審査委員のうち、当初予定されていたヤニーナ・フィアルコフスカ(ポーランド/カナダ)が健康上の理由により辞退し、ウタ・ヴェヤント(ドイツ)が代理を務めることが、コンクール事務局より発表された。

■第10回 浜松国際ピアノコンクール
2018.11/8(木)〜11/25(日)アクトシティ浜松
チケット発売:7/8(日) ※通し券あり

■第10回 浜松国際ピアノコンクール開催記念 ガラ・コンサート
「覇者たちによるコンチェルトの饗宴」

2018.9/16(日)、9/17(月・祝)各日14:00 アクトシティ浜松
ピアノ:アレクサンダー・コブリン、アレクサンダー・ガジェヴ、アレッシオ・バックス(以上9/16)アレクセイ・ゴルラッチ、イリヤ・ラシュコフスキー、アレクサンダー・ガヴリリュク(以上9/17)
山下一史(指揮) 東京交響楽団

■第10回 浜松国際ピアノコンクール オープニング・コンサート
アレクサンダー・ガジェヴ ピアノ・リサイタル

2018.11/7(水)19:00 アクトシティ浜松

http://www.hipic.jp/