日本が生んだドイツのカルテットの熱演
シューマンの「室内楽の年」として知られる1842年に、3曲セットで作られた弦楽四重奏曲集「作品41」。シューマンの心情や歌心、クララへの想いが弦の響きに託された魅力作ぞろいだが、第3番以外は体験できる機会が少ない。しかし来る3月、京都、広島、東京の3都市で、この3曲セットの真価を体験できるチャンスが訪れる。
演奏はロータス・カルテット。1992年に日本人女性4人により結成され、ドイツのシュトゥットガルト音楽芸術大学でメロス弦楽四重奏団に師事。ドイツBDI音楽コンクール弦楽四重奏部門で第1位を受賞、以降は同地を拠点とする「ドイツの伝統を受け継ぐ四重奏団」として活動。2005年の第2ヴァイオリン奏者の交代を経て、現在は世界的に活躍し、多忙を極めている。また、同団はシューマン全曲を03年に録音(リリースは06年)、代表盤となっている。弾きこんできた作品群である上、今回のシューマン全曲演奏会は3都市3日連続公演で、集中を途切れさせずに全公演に臨む。
作品も、ベートーヴェンやメンデルスゾーンの影響を感じさせる淡い情緒が美しい第1番、シューマンとしては異例なほど晴朗で軽快な音楽が楽しい第2番、そしてシューマンならではの濃密な情感が宿る第3番と、同時期の作曲ながら見事にキャラクターが異なる。特に第3番第3楽章は白眉となる名品で、明暗の間を揺れ動く、むせかえるようなロマンが心に残る。“日本が生んだドイツのカルテット”の熱演で、シューマンの世界に耽溺できる、またとない好機だ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2018年3月号より)
2018.3/23(金)19:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
3/24(土)16:00 広島/エリザベト音楽大学 セシリアホール
3/25(日)14:30 Hakuju Hall
問:KCMチケットサービス0570-00-8255
http://www.kojimacm.com/