世界へと羽ばたいた6人による協奏曲三昧の2日間
1991年にスタートし、今年11月の開催で第10回を迎える浜松国際ピアノコンクール。優勝者がその後飛躍を遂げるケースが多く、その実績は、話題となった恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』執筆のきっかけにもなったといわれるほどだ。
今回は特別な節目となる開催ということで、過去の覇者から6人のピアニストが浜松に集結。ベテラン指揮者の山下一史、コンクール本選の演奏でおなじみの東京交響楽団とともに、2日間にわたり6つのピアノ協奏曲を演奏する。
初日はまず、第5回最高位のアレクサンダー・コブリンから。ヴァン・クライバーン・コンクールの覇者でもある彼は、知的で深い音楽性が生かされるブラームスの2番を弾く。前回優勝のアレクサンダー・ガジェヴが若さとエネルギーをもって演奏するのは、ラフマニノフの3番。アレッシオ・バックス(第3回優勝)はチャイコフスキーの1番で、約20年を経て成熟した音楽を聴かせる。
2日目はアレクセイ・ゴルラッチ(第6回優勝)から。その後ダブリンやミュンヘンで優勝した彼も今年30歳。演奏するのはベートーヴェンの「皇帝」だ。イリヤ・ラシュコフスキー(第8回優勝)はブラームス1番。聴衆を圧倒したコンクール時のプロコフィエフとは別の魅力が発揮されるだろう。また、当時の中村紘子審査委員長が“20世紀後半最高の16歳”と評したアレクサンダー・ガヴリリュク(第4回優勝)は、ラフマニノフの2番で高い技巧と深い音楽性を披露する。
彼らの優勝当時を知る人にとっては、変貌ぶりを聴く絶好の機会。同コンクールでの成功が、いかに若いピアニストの背中を押しているかを知ることにもなりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2018年3月号より)
2018.9/16(日)、9/17(月・祝)各日14:00 アクトシティ浜松
セット券:3/11(日) 単券:4/15(日)発売
問:浜松国際ピアノコンクール事務局053-451-1148
http://www.hipic.jp/