美しき大和ことばが紡ぎ出すいにしえの恋物語
2009年に初演されて以来、好評を得て再演を重ねてきた千住明のオペラ《万葉集》。その第1部「明日香風編」が、2月18日、八王子のいちょうホールで演奏会形式によりふたたび披露される。
俳人として人気の黛まどかが台本執筆を行った《万葉集》は2部からなるオペラで、その第1部「明日香風編」の舞台は7世紀。中大兄皇子(天智天皇)、大海人皇子(天武天皇)という兄弟、万葉の女流歌人・額田王、その姉とされる鏡王女が繰り広げる恋物語を軸にした華麗な歴史絵巻である。万葉集からとられた名歌とそれをつなぐ歌詞が、いにしえのロマンの世界にいざなってくれる。創作に加えて編曲、プロデュースなど多彩な活動を展開してきた千住の音楽は、従来のいわゆる現代音楽にとどまらないドラマティックな魅力を備えている。台本の日本語を引き立てる洗練された響きに彩られており、日本語オペラを初めて聴く人にも楽しめるものとなっている。
東京交響楽団を指揮するのは、初演成功の立役者でもあり、千住作品のもっともよき理解者である大友直人。そして共演する歌手は、額田王役の盛田麻央をはじめ、鏡王女の金子美香、中大兄皇子の又吉秀樹、そして大海人皇子の原田圭といった日本語歌唱にも長けた歌手が揃った。恋物語に華を添える合唱は、地元の八王子クリンゲンコア(合唱指揮:足立さつき)。演奏会前半にはチャイコフスキーの弦楽セレナードが演奏されるので、こちらも併せて楽しみたい。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2018年2月号より)
2018.2/18(日)14:00 八王子市芸術文化会館 いちょうホール
問:八王子市学園都市文化ふれあい財団042-621-3005
http://www.hachiojibunka.or.jp/