2018年に予定されている、日本・ロシア両国での文化交流事業「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」の相互開催に先立ち、「ロシア・イン・ジャパン実行委員会」(以下RINJ)設立記念コンサートと記者発表会が12月11日に都内で行われた。
(2017.12.11 都内 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
渋谷の商業施設ヒカリエ11階のオープンスペースにステージを設営して行われた無料コンサートには、ワレリー・ゲルギエフ(指揮)とマリインスキー歌劇場管弦楽団メンバーから成るストラディバリウス・アンサンブルが出演。初めに、横山幸雄(ピアノ)とマリインスキー歌劇場管のティムール・マルティノフ(トランペット)をソリストに迎え、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番が演奏された。続いて、ワディム・レーピン(ヴァイオリン)が参加して、チャイコフスキーの作品から、歌劇《エフゲニー・オネーギン》よりレンスキーのアリア(ヴァイオリン編曲版)、ワルツ・スケルツォの2曲が披露された。最後に、同じくチャイコフスキーの名曲「弦楽セレナーデ ハ長調」が演奏され、流麗な弦楽アンサンブルの響きに、通りがかりの買い物客も多くが足を止めて聴き入っていた。
続いて、場所を都内のホテルに移してRINJ設立記者発表会が行われた。同委員会は、株式会社電通とロシア最大のメディア企業ガスプロム・メディア・ホールディング、および東京急行電鉄株式会社、株式会社日本経済新聞社の4社が合同で立ち上げ、今年9月に発足。18年の日露文化交流プロジェクトを契機として、23年までの約5年間にわたり、日本におけるロシア文化の理解促進を図り、両国の親善と事業機会の創出を行うことを目的としている。従来から日本でも広く知られているクラシック音楽やバレエに加え、食、ファッション、テレビ番組、映画、スポーツといった幅広いロシア文化の魅力を紹介するプロジェクトを展開していくという。
この日の記者発表会には、ゲルギエフ、レーピン、横山の3人のアーティスト、実行委員会4社の代表のほか、日露両国政府から、ロシア連邦政府文化副大臣のアレクサンダー・ジュラフスキー、外務省欧州局審議官の相木俊宏が出席した。実行委員会を代表して、株式会社電通・代表取締役社長の山本敏博は次のように挨拶した。
「サッカーW杯ロシア大会もあり、来年はこれまでにないくらい日本でもロシアが話題になると思います。音楽やバレエ、美術のほかにも豊かな食文化、映画・ドラマなどのエンターテインメント、文学など、ロシア文化には日本人がまだあまり知らない側面がたくさんあります。多様な魅力にもっと触れて楽しんでいただくために、さまざまなプログラムを企画・実施していきます」
今回、RINJ芸術名誉会長に就任したゲルギエフは、次のように述べた。
「日本という素晴らしい国で演奏して、もう30年になります。文化が互いの人々の相互理解と信頼の発展に貢献できれば嬉しい限りです。両国政府の首脳が親密な関係にあり、互いに手を携えていくことは、とても重要なことだと私は考えています。確かに、日本の方々にまだ知られていないロシアの文化があります。この記念すべき年が、ロシア文化を広く知っていただける機会になることを願っています」
RINJ最高芸術監督に就任したレーピンは、以下のように語った。
「個人的にも日本は大好きです。今日のコンサートでも、演奏しながらとても幸せな気分に浸ることができました。芸術には翻訳は要りません。芸術を通じてロシアの“言葉”を知ってほしいと思います。それから、モスクワには日本料理店がたくさんありますが、私の知る限り東京にロシア料理店はあまり多くないようなので、日本の方々には、もっとロシア料理を知ってほしいです!」
また、横山は「今日はオープンスペースでの演奏でしたが、多くの人が足を止めて聴いてくれたのではないかと思います。ロシアと日本は海を挟んで隣同士。いま世界の社会情勢には緊迫した空気もありますが、より多くの方に、親しみをもって文化を捉えてもらえれば、争いごとは起こらないでしょうし、そのために音楽というものがあるのではないか、とさえ思っています」と述べた。
18年には、6月頃開催予定の「トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2018」(芸術監督:レーピン)、11月頃開催予定の「マリインスキーオペラ」公演や「国立トレチャコフ美術館展」(会場:Bunkamuraザ・ミュージアム)のほか、Bunkamuraル・シネマでのロシアバレエ映画上映や東急本店でのロシア・フードフェア、全国大型書店でのロシア・ブックフェアなどが計画されている(記者発表会時点)。
ロシア・イン・ジャパン
http://rinj.jp/