魅惑のラインナップ全開! 新シーズン、いよいよ開幕
充実したキャストと豪華な舞台で、世界の人気歌劇場のトップランナーであり続けているニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET=メト)。そのシーズンのハイライト演目を映画館で上映する「METライブビューイング」も、12年目に突入する。映画館で気軽に、しかも最新の公演を鑑賞できるMETライブビューイングは、“オペラ初心者”にも“オペラ通”にも大人気。ラインナップも、幅広いターゲットを意識して作られている。
新シーズンのオープニングを飾るのは、ベッリーニの名作《ノルマ》(新演出)。2人の巫女と敵方将軍の三角関係を描く悲劇だ。ベッリーニ特有の繊細な旋律美と、劇的な場面の激しい音楽が抜群のバランスで同居する。圧倒的存在感を誇る大型ソプラノS.ラドヴァノフスキーに、声も人柄も魅力的な名花J.ディドナート、朗々たる美声のJ.カレーヤと主役3人も適材適所。D.マクヴィカーの古典的な美観を重視する演出は、《ノルマ》のあるべき姿を見せてくれそうだ。
第2作目の《魔笛》は、初心者にお勧めの演目ナンバーワン。記念すべきMETライブビューイング第1作も《魔笛》だった。その時は英語版の短縮バージョンだったが、今回は原語のドイツ語によるフルバージョン。フルといっても3時間ちょっとで、ミュージカルよろしく台詞でストーリーが進み、アドリブも満載の《魔笛》は、誰をもオペラの魔法にかけてしまうまさに「魔法の笛」(=オペラのなかでは“音楽の力”の象徴)。ミュージカル『ライオンキング』を手がけたJ.テイモアの幻想的な演出が、魔法の力に輪をかける。METのレジェンドJ.レヴァインの指揮に、大御所R.パーペ、スタイリッシュな美声と演技力のM.ヴェルバ、脅威の新星コロラトゥーラC.ルイックなど精選されたキャストはさすがMETだ。
第3作はMET初演となる《皆殺しの天使》。同名の名作映画を原作にしたサスペンス不条理劇オペラだ。なぜか部屋から出られなくなったパーティーの参加者たちが、時間の経過とともに追い詰められていく様をスリリングな音楽で描く。世界が注目する作曲家のT.アデス自身による指揮にも注目だ。
第4弾の《トスカ》(新演出)も、タイプは違うが《魔笛》同様に誰でも楽しめるオペラ。1800年のローマを舞台にした、これもサスペンス仕立ての恋愛悲劇だ。絶好調のS.ヨンチェヴァをヒロインに、声にも姿にもオーラ輝くV.グリゴーロ、堂々たる声の演技巧者B.ターフェルと三大スターが勢ぞろい。すべてローマの名所として実在する劇中の場所を忠実に再現するというD.マクヴィカーの演出で、「これぞ《トスカ》!」と呼ぶにふさわしい体験ができそうだ。
第5作目以降も楽しみな公演が目白押し。新演出は、1950年代のリゾート地にある遊園地を舞台に展開する《コジ・ファン・トゥッテ》、ディドナートがシンデレラを演じるロマンティックな《サンドリヨン》(MET初演)の2編。ドミンゴ、レヴァインの2大レジェンドをはじめ、シーズン随一の豪華キャストを誇るのは《ルイザ・ミラー》。ロッシーニの超大作《セミラーミデ》も、若手から名手まで粒揃いのキャスティング。F.ゼフィレッリの豪華演出が人気の《ラ・ボエーム》は永遠の定番、B.シャーによるおしゃれな演出とI.ダルカンジェロやM.ポレンザーニなど華やかなキャスティングが魅力的な《愛の妙薬》がラインナップされているのも嬉しい。
文:加藤浩子
(ぶらあぼ2017年11月号より)
METライブビューイング2017-18シーズン
2017.11/18(土)《ノルマ》(新演出)より順次公開
※上映劇場などの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.shochiku.co.jp/met/