社会的なテーマをダンスとコンテンポラリー・サーカスで描く
日本での知名度はまださほど高くはないが、この2組はすごい顔合わせだ。韓国とフィンランド、それもコンテンポラリーなダンスとサーカスのコラボレーションである。しかもテーマが韓国社会(だけではないが)に深く根ざしている整形美容だというのだから、かなり挑戦的だ。
韓国側の演出・振付のアン・ソンスはアメリカのジュリアード音楽院で学び、世界中で数々の賞を獲得している。昨年は韓国国立コンテンポラリー・ダンス・カンパニー(国立はアジアで唯一)の芸術監督に抜擢された、まさに“時の人”である。おまけに横浜ダンスコレクションなどでもファンが多いキム・ボラム他が出演する。長身でユーモラスな動きから、ハイスキルを駆使したダンスまで、能力の高さは折り紙付きだ。
フィンランド側の演出はヴィッレ・ヴァロ。最先端の舞台芸術であるコンテンポラリー・サーカスの世界で、フィンランドは国立サーカス学校があるほどの先進国である。中でもヴァロが共同芸術監督を務めるWHSは、サーカスとはいえ映像などの美術を駆使した極めてアーティスティックな舞台で名高い。
この両者が組んだタイトルは写真用語で「二重露光」、つまり二つの画像を一枚に焼き付けることを意味する。整形手術で、作り物と知りつつも美しさを求めずにはいられない人々。手術はエスカレートし、完全な満足は得られることなく新しい顔ばかりが生み出されていく。虚像が実像を凌駕するとき、真実はどこにあるのだろう? 変身願望は誰しも抱く。「禁断の扉の向こう側」を垣間見られる舞台を見てみよう。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ2017年9月号より)
2017.9/22(金)〜9/24(日) あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
問:あうるすぽっと03-5391-0751
http://www.owlspot.jp/
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