仲道郁代(ピアノ)

作曲家3人の名作に聴く“若さ”の輝き

C) Kiyotaka Saito

 今年デビュー30周年を迎える仲道郁代。多彩なプログラムによる演奏活動にとどまらず、CD『永遠のショパン』やサントリーホール公演を収録したDVD他の新譜発売や記念コンサートなどにも精力的に取り組み、ますます活動の幅を拡大している彼女が、大好評シリーズ『アフタヌーン・コンサート・シリーズ』に出演する。
「ロマン派を代表する3人の作曲家の若い頃の作品を集め、タイトルを『青春の輝き』としました。ショパンがポーランドへの熱い想いを綴ったポロネーズやエチュード、シューマンが作曲家として力強く歩み出した頃の『交響的練習曲』など、それぞれの作曲家が作品にぶつけた“若さ”をお楽しみいただける内容だと思います」
 ソロと共に、松田理奈(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、上村文乃(チェロ)という若手の弦楽器奏者との共演で、ブラームスの「ピアノ四重奏曲第1番」も演奏。ここにも仲道の“青春”に対する想いが表れている。
「最近は本当に才能に溢れた若い奏者の方の演奏に感動する機会が多く、また学ばせていただくことも非常に多いのです。“若さ”が成熟していく過程や、冒険的な試みには、音楽をする上で大切なことがたくさん詰まっています。お客様にはそれらの力強い融合を見届ける“証人”になっていただければと」
 名曲、大曲揃いのプログラムだが、特にシューマンについてはデビュー30周年プロジェクトの一環として今秋にオール・シューマン・プログラムのリサイタル(11/5 東京文化会館小ホール)を予定するなど、現在特に力を入れていると同時に、仲道の“青春”を象徴する作曲家でもある。
「コンクールや演奏会、デビューCDなど、“青春時代”は本当にどっぷりとシューマンに漬かっていましたが、ベートーヴェンに深く取り組み、論理性を重視していくようになったとき、直感的な感情で動くシューマンの音楽に距離を感じるようになってしまったのです。しかし今、ベートーヴェンを通して学んだことを活かして、新しい観点から伝えられるものがあると思い、新たな気持ちで取り組んでいます。今回、シューマンの純粋さや未知なるものへの憧れ、青春ならではの“苦み”がこもった作品を紹介することにより、リスナーの方々にも共感してもらえるものがあると思います。そして改めて“音楽っていいな”と思っていただければ嬉しいです」
 節目の年を迎え、さらに音楽性を深め、活動の幅を広げていく仲道が新たな気持ちで臨むシューマンや、若い才能とのアンサンブルなど、新たな発見と感動の連続に出会えるコンサートとなりそうだ。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ 2017年8月号から)

アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2017-2018前期
仲道郁代(ピアノ) 「青春の輝き」〜ショパン、シューマン&ブラームス
若き女神(ミューズ)たちとともに
2017.8/16(水)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp/