NHK音楽祭 2017

世界的奏者が繰り広げる“声とオーケストラ”の饗宴


東京は今や、世界屈指の音楽都市である。シーズンになると名門オーケストラやオペラ座が続々と来日し、日によっては公演がかぶることさえある。加えて在京オーケストラのレベル・アップも目覚ましい。クオリティと量の双方を考えると、東京を凌ぐ都市は果たしてあるのだろうかとすら思う。
でも、それだけに「どれを聴けばいいの?」と迷ってしまうファンも多いはず。そんなあなたに「これを押さえておけば大丈夫!」というチョイスを提案したい。ズバリ、NHK音楽祭である。15回目を迎える今年もまた、世界の音楽界の今を肌で感じられるラインナップとなっている。「人は歌い、奏でつづける」をテーマに、オペラをはじめとする重量感のある曲がずらりと並んだ。

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) NHK交響楽団

トップバッターは我らがNHK交響楽団とそのシェフ、パーヴォ・ヤルヴィ。今年2月から3月にかけて行われた欧州ツアーでも各地で熱演を聴かせ、「東京にN響あり」を印象付けた。モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》(全曲)で、旬のコンビがオペラを初披露する(9/9)。キャストでは“女あさり”を悔い改めず地獄に落ちるジョヴァンニ役が特に重要だが、題名役のヴィート・プリアンテは世界の歌劇場を席巻しつつあるライジング・スター。他にも若手を中心に隙のないメンバーで、今後の成長株を発掘するのも面白そうだ。パーヴォの緻密なタクトで、当意即妙、密度の濃いアンサンブルが楽しめるだろう。

キリル・ペトレンコ(指揮) バイエルン国立管弦楽団

続いて、次期ベルリン・フィルのシェフとして注目されているキリル・ペトレンコが、バイエルン国立管弦楽団を引き連れ来日。東京で初めてそのヴェールを脱ぐ(10/1)。出演歌手も豪華。マーラーの「こどもの不思議な角笛」にはバリトンのマティアス・ゲルネ、ワーグナーの《ワルキューレ》第1幕ではジークムント役にクラウス・フロリアン・フォークトと、美声で鳴らす当代のトップスターを贅沢に配した。完成度に強いこだわりを持つ指揮者にしてこのキャスト。名演は約束されたようなものだ。ドイツの顔ともいうべき歌劇場とオーケストラを率いる実力を、この目と耳で確かめたい。

ウラディミール・フェドセーエフ(指揮) チャイコフスキー交響楽団

11月にはウラディーミル・フェドセーエフがチャイコフスキー交響楽団と共に、オペラ《エフゲニー・オネーギン》(全曲)を聴かせてくれる(11/9)。モスクワ放送響と名乗っていた時代から通算すると、フェドセーエフは実に40年以上にわたってこのオーケストラを率いてきた。文字通り以心伝心のチャイコフスキーになること必定だ。濃密なロシア調を持つこの悲劇でタイトル役を務めるワシーリー・ラデュクとタチヤーナ役のエカテリーナ・シチェルバチェンコは、2005年の静岡国際オペラコンクールで1位と3位に入賞している。いまやロシアの歌唱界を代表する歌手に成長し、そろい踏みで帰ってきてくれるのも嬉しい。

ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

掉尾を飾るのはヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(11/13)。今年90歳になる巨匠の人気は世界中でいや増すばかり。毎年のように来日、N響との共演でも深い感銘を残してくれているが、名誉カペルマイスターとして長い共演歴を誇るゲヴァントハウス管とのブラームス「ドイツ・レクイエム」では、伝統オーケストラの風格を存分に引き出してくれるだろう。バリトンのミヒャエル・ナジはドイツ・オペラ界で叩きあげられた実力派。ウィーン楽友協会合唱団はウィーン・フィルをはじめ数多くの名門オーケストラと共演し、「ドイツ・レクイエム」など数々の名曲を初演してきた“究極のアマチュア合唱団”だ。
オペラは全て演奏会形式。名匠・名歌手たちの奏でる音楽にじっくりと耳を傾けたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) NHK交響楽団 2017.9/9(土)15:00
キリル・ペトレンコ(指揮) バイエルン国立管弦楽団 2017.10/1(日)15:00
ウラディミール・フェドセーエフ(指揮) チャイコフスキー交響楽団 2017.11/9(木)18:00
ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 2017.11/13(月)19:00
NHKホール
問:ハローダイヤル03-5777-8600/NHKプロモーション音楽祭係03-3468-7736
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